ドキュメンタリー『大坂なおみ』はある意味、受け止め方を視聴者に委ねています。感動ポイントや山場が示されるわけでもなく、アート系映画のようなわかりにくさがありますが、それは監督のスタイルとも言えるもの。
監督、製作総指揮を務めたのはアフリカ系アメリカ人女性のギャレット・ブラッドリー。第93回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞にノミネートした『タイム(原題:TIME)』を製作・監督した実績を持つ人物です。
『タイム』では6人の子の母親フォックスさんの目線から、アメリカの差別的な刑事司法を訴えかけていき、やはりこの作品も客観的な説明はいっさい入りません。ちなみにAmazon Prime Videoで独占配信されていますから、日本でも視聴可能です。闘う女性の生き様を追うことに長けた監督であることがわかると思います。
監督は大坂なおみのことを「知らなかった」
ただし、その伝え方は淡々と。『大坂なおみ』の製作を振り返り、Netflixの公式インタビューに答えたブラッドリー監督の言葉からもそれが伝わってきます。
「私にとって重要だったのは、可能な限りオープンな姿勢でこのプロジェクトに挑むことでした。彼女がどんな人なのかはもちろん、このシリーズがどんなものになるのかについても、具体的なイメージを持たないようにしようと考えていました」
撮影に入る前までブラッドリー監督は大坂なおみのことを「知らなかった」とも明かしています。そのうえで「彼女の人生に立ち会うことを最大の目的」とし、透明性を持った次世代のスポーツ選手のあるべき姿を反映させているのです。
東京五輪を巡って彼女の動向が注目された今のタイミングに見届けるのもよし。じっくり自身の人生を見つめ直したいときにみるのもオススメです。
「作品を見た方たちに共感の持つ力を感じてもらって、人生の中でチャンスをつかむための後押しができたらいいと思っています。とくに今、何かに挑戦することがとても難しく感じられる、この時代に」
と、語るブラッドリー監督の狙いどおりの作品です。スポーツドキュメンタリーという枠を超えて、人間の本質と生き方を捉えたものが今の世の中に求められていることを証明しています。
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