どこが復興五輪?「被災者は今も放置」残酷な現実 コロナだけでなく原子力緊急事態宣言も発令中

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その後庄司さんは妻と離婚し、1人で南相馬市に戻っている。「自分のせいだ」と自らを責め、うつになり、半年ごとに入退院を繰り返す。「こころのケアセンター」の訪問支援を受けているが、精神状態は一進一退だ。

この7月、筆者が電話し、「今月の25日に会いに行きますよ」と約束した際にも「そのときまでは生きていないと思います」と口にしていた。

黎央さんのことを思い出し、涙を拭う庄司範英さん(筆者撮影)

重度精神障害相当の人は全国平均の2倍近い

原発事故に関わる、深い心の傷――。

庄司さんのような被災者は、決して珍しくない。避難指示が出た12市町村などの約20万人を対象に福島県が毎年実施する健康調査(2019年実施版)によると、回答者3万0674人のうち、5.7%が重度精神障害相当となった。

年ごとに徐々に減ってきてはいるものの、平常時の全国平均(3%)の2倍近くという状態が続く。そうした中、帰還困難区域の住民と原発周辺の年間世帯所得600万円以下の被災者に対して継続されていた医療費の一部負担金免除措置も打ち切られようとしている。

庄司さんは「医療費がかかるようになると、困ります。もし入院するようなときがあったら、どうしたらいいのか」と動揺を隠せない。筆者がこれまでに会った原発避難者にも、避難生活で心身の治療が必要となった人は数多い。医療費免除まで打ち切りになったら、受診を控える人も出てくるだろう。

彼らの避難生活はもう10年以上。そうした人々に関する報道量も減った。見えないところで、彼らは今も、経済的にも身体的にも、そして精神的にも追い詰められている。

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