「東電の手口はいじめ」協業ベンチャーが怒る訳 合弁相手パネイルは不法行為で提訴する方針

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PinT設立後の記者会見での東電出身の田中将人・PinT社長(中央)と、パネイルの名越達彦社長(左)。両者の蜜月はわずか1年余りで終わった(写真:共同通信)

電力・ガス小売ビジネスのシステム開発を専門にするベンチャー企業が、提携先である東京電力グループの小売企業などを相手に、損害賠償請求訴訟の準備を進めていることがわかった。

ITベンチャーの「パネイル」(名越達彦社長)が2020年11月13日付けで東京地方裁判所に提出した書面によると、共同不法行為により同社に損害を与えているとされたのは、東京電力エナジーパートナー(以下、東電EP。秋本展秀社長)およびその子会社でパネイルとの合弁企業「PinT」(田中将人社長)、パネイルの元取締役最高技術責任者(CTO)でPinTに移籍(現在は退職)したS氏ら。

東電EPなどが共謀したうえで、パネイルから提供されていたシステム関連の業務をわが物にすべく、人材引き抜きやソフトウエアの無断複製などさまざまな不法行為に及んでいると、パネイルは同書面で主張している。

電力小売最大手の東電EPと、電力関連のクラウドシステムの開発に強みを持つパネイルが合弁会社PinT設立の記者会見を行い、「ITとエネルギーを融合し、電力とガスの小売り販売を全国展開する」と高らかに宣言したのは2018年4月。だが、全国展開のためにともに手をたずさえたはずの両社は、わずか2年余りで全面対立の事態に陥った。

元CTOの移籍をめぐり対立が表面化

仲たがいの原因となったのが、PinTによるパネイルからの人材の引き抜きだとされる。東電EPとパネイルの共同出資会社であるPinTでは東電EP出身者が社長を務め、出資比率も6:4と東電EP側がマジョリティーを握る。反面、パネイル側も東電EPと同数となる名越氏ら4人を取締役として送り込むなど、「対等の精神で共に手をたずさえて事業を拡大していくという考えだった」(PinT関係者)。

ところが、小売事業開始からわずか1年余りしかたたないうちに、次々と異変が起きた。

2019年6月、パネイルの福岡市内のコールセンターに勤務する社員4人を含む6人の社員が同時にPinTに移籍。さらに同年12月にはパネイルでCTOを務めていたS氏から突然、退職したいとの話が出た。パネイルは慰留したもののS氏の意思は変わらず、2020年2月末に取締役を辞任して退職。その直後の3月1日付けでS氏はPinTに移籍した。

このS氏の移籍をめぐり、パネイルと東電EP、PinTとの関係悪化は決定的となった。パネイルは退職前の2020年1月にS氏から今後3年間にわたり競合関係になりかねない企業に再就職しないことを約束した誓約書を受け取る一方、PinTの取締役会において名越氏はパネイルとPinTの間で競合関係が生じかねないことなどを理由としてS氏のPinTへの転籍について認められないと強く主張した。

これに対して東電出身の田中・PinT社長は「法律上問題はない」などと反論。「認識の溝が埋まらず、パネイルの理解が得られないまま、S氏は2020年3月からPinTで勤務することになった」(PinT関係者)。

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