「東電の手口はいじめ」協業ベンチャーが怒る訳 合弁相手パネイルは不法行為で提訴する方針

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そしてS氏の転籍を機に、パネイル側が恐れていた事態が現実のものとなった。パネイルが東京地裁に申し立てたことで実施された裁判官立ち会いの元でのS氏の自宅などへの立ち入り調査により、パネイルが構築したプログラムなどが保管されていたクラウド上のライブラリが秘かにPinT側に複製されていたことが、S氏のパソコン内の記録から判明したのである。

パネイルは立ち入り調査で取得した証拠を元に、前出の書面で「S氏の行為は当社の知的財産の無断複製であり、東電EPおよびPinT、S氏による共同不法行為に当たる」と主張した。

なお、この「無断複製」とのパネイルの指摘について見解を問い合わせたところ、S氏はパネイルの主張について事実無根だと述べたうえで、詳細については回答を拒否。PinTからも取材協力を得られなかった。

一方、東電EPの広報担当者は、「パネイル社と元CTOの訴訟に関わる内容であり、当社としては、回答を控える」としたうえで、「無断で複製したと指摘されているライブラリについては、『元CTOが一から作成し、知的財産権等はPinTにある。プログラムの保管場所については、パネイル社からPinTが管理する場所に移動したものであり、複製には当たらない』との報告をPinTから受けている」などと回答した。

他方、パネイルの広報担当者は東電EPなどを相手取った訴訟の準備について「裁判所に提出した書面の通りなので、そちらで確認してほしい」と説明している。

 「契約の不備を逆手に取った」

このように言い分は真っ向から食い違っているが、一連の事情を知る関係者は次のように内情を説明する。

「そもそもS氏やPinT側に知的財産権があるという主張には誤りがある。パネイルとPinTとの間ではシステムの受発注の事実もなければ納品も行われていない。システムはパネイルのプラットフォーム上で構築し、PinTが使用していたというのが実態だが、システムの使用に関する具体的な契約も結ばれていなければ対価も支払われていなかった。創業間もないPinTをスピーディーに利益体質に転換させることが狙いだったが、契約が不備だったことをPinT側が逆手に取ったというのが真相だ」

さらに「S氏一人ですべてのシステムを構築したかのような説明も間違っており、実際にはパネイルのほかのエンジニアも多くかかわっている。立ち入り調査で『無断複製』の事実が明るみに出たことにより、急遽、反論の仕方を変えたのではないか」とも言う。

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