「東電の手口はいじめ」協業ベンチャーが怒る訳 合弁相手パネイルは不法行為で提訴する方針
立ち入り調査によって判明した証拠は、パネイルがS氏を相手取ってすでに起こしているPinTからの業務委託禁止や損害賠償などを求める訴訟において、東京地裁に提出されている。
閲覧によって確認したところ、PinT社内でのチャットのやり取りの中でS氏が「現状、他社のライセンスのものを使用しており、自社ライセンスのものを新規に開発したく」などといったメッセージを外注業者に送っていたことがわかった。事情を知るPinT関係者によれば、ここでいう「他社」はパネイル、「自社」はPinTを指しているという。
すなわち、PinTがパネイルのシステムを秘かに「内製化」しようとしていた実態を意味しているというのである。この説明が事実であれば、パネイルにしてみれば、ひさしを貸して母屋を取られたということになる。
「パネイル戦線」でタッグ組む東電EPとS氏
一連の紛争がパネイルとS氏との間の紛争であるかのように印象づけようとする東電EPの説明にも無理がある。
S氏のパソコンの調査を通じて、東電EPの法務担当幹部からS氏にパネイルとの法的訴訟に備えて弁護士が紹介されていたことや、同幹部がS氏やPinTの田中社長宛てに「本件についてはSさん、PinT、東電EPがタッグを組んで対応していきたいと考えております」というメールを送っていたことが判明している。メールが送信された2020年3月25日当時からすでに東電EPやPinTの田中社長とパネイルとの間で深刻な対立が生じていたことは、東電の法務担当幹部が「タッグ」という言葉を使っていることからも読み取れる。
また、同日付けでPinTの田中社長がS氏や東電の法務担当幹部宛に返信したメールでは、パネイルとの争いについて「パネイル戦線」と称し、「存分に戦ってまいります」などと敵意をあらわにしていた。
その直前の2020年3月19日付けの「業務委託に関するご連絡」と題したPinT宛て文書により、パネイルの名越社長はPinT取締役会の決議を得ることなく、PinTがS氏を採用したことについて、「共同事業のパートナーとしての信頼関係を著しく毀損するものです」と述べている。
また、「『パネイルクラウド』上のライブラリに関する知的財産権はすべてパネイルに帰属している」と主張したうえで、「今後は、従前の無償での提供ではなく、別添の契約条件を内容とするパネイルクラウドのカスタマイズ利用契約を正式に締結することとさせていただきます」と言及。続けて「貴社(=PinT)に転職したS氏のノウハウ等を活用し当社の知的財産権を侵害する代替物等を開発することのないようご留意ください」とも述べている。当時からすでにパネイルはS氏による無断複製を警戒していたことがわかる。
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