アメリカ主導の超ド級金融相場ついに終盤戦へ <専門家3人に聞く>株式市場の行方とリスク
田中泰輔リサーチ代表で、楽天証券経済研究所グローバルマクロ・アドバイザー(客員)を務める田中泰輔氏は、今年後半のアメリカ株相場について「コロナ下での超ド級の金融相場が終盤戦に入っていく局面」と位置づける。6月以降、大型グロース株中心に「サマーラリー」(アメリカでの夏場にかけての株価上昇)に入ったが、秋以降はその上昇分を相殺する形での大幅反落も想定されると読む。
田中氏は、「コロナ禍からの経済正常化はデコボコ道。経済指標は供給制約などの過渡的な要素と底流にある持続的な要素が混在して、浮き沈みが激しい」と指摘する。
そして、「今年4~6月期には経済指標が前年比で強く出て、株式市場はインフレ懸念で動揺したが、市場もだんだん数字のフレに慣れてきた。7~9月期になると、経済指標は前年比でも前月比でも伸びが落ち着き、FRBによる金融緩和の早期解除はないとの見方が株価を下支えする」と話す。
しかし、「10~12月期になると、景気の回復加速は底流として変わっていないことがわかってくる。雇用増加が加速し、真性インフレも垣間見えてきて、2022年への利上げ前倒しの可能性も意識される。市場金利が上昇し、株式相場は調整を余儀なくされる」とみる。
地味でリズムがつかみにくい日本株
2022年について田中氏は、「アメリカでは秋に中間選挙があるため、財政の崖(財政政策による景気刺激効果の急激な剥落)を回避しようと政策的サポートが予想される。アメリカ経済は2022年も潜在成長率を上回る実質3%成長が見込まれ、業績改善も続くため、相場が落ちたところでは押し目買いが入る。金融相場の力強さはなくなるが、業績を見ながら底堅い展開が続く」と読む。
最近の米長期金利の低下については、「FRBがインフレファイターの姿勢を見せたことに加え、日欧に比べて高い利回りと流動性を背景にアメリカ国債への買い需要が強いことから金利が落ち着いてきている」と分析。
ただ今後は、「アメリカ経済がデフレギャップ(需要不足)からインフレギャップ(需要超過)の領域に入り、完全雇用と真性インフレが意識される中で長期金利は上がっていく方向」とみる。もっとも、「長期金利が2%を超えてくると住宅市場や株式市場が反落するため、どんどん上昇が続くという状況にはならない」と話す。
為替については、「金融緩和効果や株安に伴うドル安と、金利先高感の中でのリフレトレードによるドル高の綱引き」が基本観で、今年末時点では株安によるリスクオフで現在よりややドル安円高方向との見立て。
日本株については、「経済成長率やプラットフォーマーなどの企業の成長力を考えれば、アメリカ株対比で日本株は指数的に劣勢というのが基本的な見方。ただ、日本市場全体が景気敏感株とみられており、割安感や分散投資のニーズからは見直し買いが入る」と指摘する。
また、「日本市場はリスクをとって売買する人の厚みが感じられず、外国人投資家任せ。外国人が関心を示さない局面では積極的に手がけにくい。アメリカ株は貪欲さと不安がリズムを持って出てきて心電図を見ているようで面白いが、日本株は相対的に地味でリズムがつかみにくい」という。
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