さらに彩さんは独自ルールも自らに課した。自分からは選ばないことと医師などのハイスペックな男性からのアプローチは無視することだ。
「私がいいなと感じるような男性は、もっと若くてかわいい子と付き合いたいことが結婚相談所で実証済みだからです。同じ理由でハイスペックな男性も私を選ぶはずはありません。詐欺などの犯罪に遭うのが怖いので、同年代で私と同じぐらいの収入の男性だけと会うことにしました」
さきほど結婚相談所への15万円は無駄にしたと語っていた彩さんだが、「身の程」を知った体験を次の婚活に生かしたとも言える。実際、宏明さんを含めて5人の男性と会うことができた。
「そのうち4人は写真を盛っていました(笑)。写真よりも実物のほうが良くて、また会ってもいいなと思えたのは夫だけです」
当時の日本はラグビーワールドカップで盛り上がっていた。日本代表の試合を連続してスポーツバーで観戦して自然と親しくなれた。このまま少し強引に誘ってくれたら、「男らしい」男性が好きな彩さんが慣れ親しんだ交際開始パターンとなっていただろう。
「でも、一向に進展しませんでした。2人で車で出かけても手すら握らないんです」
宏明さんはいったい何を考えていたのか。彩さんを単なる友だちだと思っているのだろうか。アプリでの出会いなので相談できるカウンセラーはいないが、彩さんには心強い味方がいた。近所に住んでいる既婚男性の友人、「おじさん」たちだ。
「それまでも恋愛相談に乗ってもらっていました。夫とのことを話したら、『直接、聞いてみるのが一番』とか『都合よくキープされているのかもよ』と言われたので、クリスマスデートに誘われたときに『この時期に一緒に過ごすならきちんと付き合ってほしい』と伝えたんです。私は自分からは告白しない主義なのですが……」
しかし、宏明さんの答えは予想外のものだった。
「君のことを真面目に考えていないわけじゃない。でも、次に付き合う人とは結婚しようと決めているので、今すぐには結論を下せない」
振られたも同然だと彩さんは感じたが、宏明さんは平然とした様子で「とりあえず次に会う約束はしよう」と発言。意味がわからないままキスもしないデートを重ね、クリスマス当日に今度は宏明さんからの告白があった。
「待たせてゴメン。考えが固まった。結婚を前提に付き合ってください」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら