決定的だったのは周作さんから実家での同居を提案されたことだ。両親にもお金の余裕がないにも関わらず、建売住宅を購入し、現在は独身の兄も含めて「一家総出」で住宅ローンを返済中らしい。
「私の親は離婚しています。そのときにお金で揉めていたことを思い出してしまいました。彼とも離婚することになったらきっとお金で争うことになるでしょう。悩んだ末に別れることにしました。気持ちの優しい彼にはめっちゃ泣かれてしまいましたが……」
別れたときに34歳になっていた彩さん。周りを見渡すと、男友だちの大半はすでに結婚している。もう伝手はないと判断し、結婚相談所に入会することにした。
「身の程を知ることになった経験です。私がパッと見で気になってお見合いを申し込んだのは、年下もしくは5歳上までの清潔感のある男性です。年収も私よりは上の人を選びました。でも、そういう人は私よりも若くてかわいい女性を選べるので、すべて断られてしまったんです」
お見合いを申し込んでくれた男性10人以上と会ってデートもした。真面目で「いい人」ばかりだとは思ったが、インドア派の人が多くて会話も弾まない。好きでもない段階から高級店での食事をご馳走になったりすることに違和感を通り越して罪悪感が募った。
「申し訳ない気持ちばかりでちっとも楽しくないんです。カウンセラーに伝えたら、『そんなんじゃ一生結婚できないよ』と叱られたので、『それでもいいです』と言って退会しました」
入会金と1年間の月会費などで15万円ほどを「どぶに捨てた」と苦笑する彩さん。モテる人を追いかけるような恋愛をして来た彼女には、結婚前提で交際が始まる結婚相談所のシステムと会員の傾向に馴染めなかったのだろう。
「それからは婚活パーティーに参加していました。結婚相談所と比べると会話のノリがいい男性もいましたが、そういう遊び人タイプにひっかかって最終的には捨てられてしまうんです。婚活日記をつけていたので自分の行動パターンがわかってきました」
婚活パーティーにも見切りをつけて気晴らしにキャンプに行った際、理想的な夫婦と知り合った。しっかり者の妻と自由奔放な雰囲気の夫は登山やマラソンという共通の趣味があって息が合っている。
「すごくお似合いですね、どうやって知り合ったんですか、と質問したら、アプリだと教えてもらいました。スマホさえあれば全国の人と無限につながれるし、趣味が同じ人も簡単に探せるよ、と聞いて興味を持ちました」
夫のほうからは具体的なアドバイスも授けられた。マッチングアプリには登録者が無数にいるので、「他にもいい人がいるかも」と永遠に本命が決まらないまま婚活が趣味のようになってしまう。利用するアプリは最大手の1つだけにして、2カ月経ったら相手が見つからなくてもやめること、といった内容だ。
「プロフィールの写真は加工するな、とも言われました。加工している人とは実際に会った瞬間に帰りたくなるから、だそうです(笑)」
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