保健所職員の7割が不眠症、コロナ相談「負の構図」 長時間労働に加え、人格攻撃など精神的負荷も
新型コロナウイルスについての電話相談に携わった人の約7割に不眠症状があるという調査結果を、東北大の研究グループがこのほど発表した。2020年9月~2021年1月にかけて、仙台市を除く宮城県の保健所職員・関係者に行ったアンケート結果をまとめたものだ。
原因の1つには、健康相談だけでなく、窓口ではどうしようもないコロナ関連の苦情が多く寄せられたことがあるという。給付金やワクチンのコールセンターなども含め、コロナ関連の窓口では、相談を受ける側が長時間罵倒されるなど、深刻な心理的ダメージを負いやすい。
研究グループの富田博秋教授は、「支援対象者から否定的なメッセージを受け取ると、自責感が高まりやすい。オーバーワークとあいまって、精神的負荷がかかる状況にあります」と説明する。
一方で保健所などの行政職員は弱音を吐くと市民からのバッシングも受けかねないため、SOSを発信できず、よりストレスを抱えやすい側面もあるそうだ。
「こちらに非がなくても叱責された」
主に調査があったのは2020年9月~11月で、この期間に回答した23人を分析したところ、不眠症状(69.6%)のほか、心理的苦痛(56.5%)、心的外傷後ストレス反応(極度のストレス後にみられる心身の不調/45.5%)、抑うつ症状(31.8%)などの症状が見られた。
自由回答に目を移すと、サポート体制が不十分なまま、長時間拘束されるという有事対応ゆえの負担も大きいようだ。
しかも、ただ労働時間が長いだけでなく、「こちらに非がなくても叱責された」「感情的に話し、電話担当者の人格を攻撃してくる」「説明しても納得せずに何度も電話をかけてくる人がいて困った」など、相談者対応で心理的負担がかかっていたことがみてとれる。
富田教授らは災害による心理的被害やそこからの回復支援などについて専門的に研究している。富田教授によると、保健所の置かれた苦境は東日本大震災などの災害と共通する部分があるという。