保健所職員の7割が不眠症、コロナ相談「負の構図」 長時間労働に加え、人格攻撃など精神的負荷も
「東日本大震災のとき、行政職員は自分の家も被災している中、役場に泊まり込んで仕事をする一方、被災住民や一般市民からの非難の矢面に立たされることが多くあった。行政は限られたリソースで“災害”に対応しないといけないので、全住民が満足することはない。その不満が窓口の職員個人にいってしまう」
それが感情的であったり、理不尽に感じられる部分があったりしても、訴えの背景に相談者の困窮する状況を察することができることも多い。それゆえに、行政職員はストレスをため込みがちだ。
富田教授は「行政に自分が困っていることを伝え、解決に向けて相談をすることと、行政職員も大変な状況で仕事をしているんだと考えることは両立する。考え方の引き出しを増やしていくことが大切」と呼びかける。
宮城県は増員などで負担減らす取り組み
宮城県もこうした現場の苦境に見てみぬふりをしていたわけではない。
調査があった期間の宮城県の新規コロナ感染者数は1日平均で20人未満。一方、月ごとの感染者数で過去最大だった今年3月は平均約80人と4倍になった。
だが、退職した保健師や事務職員を一時的に採用して増員をはかるなどの策が奏功し、パンクすることなく、業務を遂行しているという。
「電話にかかりっきりになると、保健師の専門業務に注力できない。県民の健康と命にかかわるので、民間のコールセンターに一部業務を委託したり、感染者数の増減に合わせて、県や市町村から数十人応援に入ってもらったりと柔軟に対応しています。
職員のメンタルヘルスについても、電話対応に苦慮している場合は上司や管理監督者がフォローにまわるなど、個人への負担が極端にならないよう、組織として取り組んでいます」(宮城県保健福祉部)
今回の調査対象は宮城県だけだったが、研究メンバーの臼倉瞳助教は、ほかの都道府県でも同様の傾向があるのではないかとみている。
「感染者数などからすれば、宮城県の保健所よりも深刻な地域もあったと思います。今回の調査結果が、保健所の負担にも目を向けてもらうきっかけになれば」(臼倉助教)
(文:編集部・園田昌也)
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