2035年、欧州で「ハイブリッド禁止」となる意味 欧州グリーンディールが他人事ではない理由
本来、ZEV法は、南カリフォルニア州特有の地形による排ガスなどの滞留に対しての早期実施が前提の政策だったが、ステークホルダー間での様々な思惑が見え隠れするようになっていったのだ。
中でも有名なのは、GM(ゼネラル・モーターズ)が、大手メーカーとして初めて大量生産したEVの「EV-1」に関する不可解な結末だ。リースにより販売されたこのEVは、明確な理由が不明なまま生産終了となり、そのほとんどがGMによって回収されスクラップになったと言われている。
多くの規制が「ZEVありき」
この事案を含めて、当時EVを限定的に販売していた日系メーカー各社のアメリカ事業関係者らも、「規制に振り回されてきた」と心のうちを明かしていた。それ以来、2010年代初め頃までの約20年間にわたり、自動車産業界でEVなど電動化といえば「ZEVありき」が大前提となった。
たとえば、ホンダが2000年代に「FCXクラリティ」や「フィットEV」をアメリカ市場に投入した際、当時の福井威夫社長や伊東孝紳社長は新車発表の場で、「あくまでもZEVありき」「補助金に頼るうちはEVや燃料電池の本格普及は来ない」と、アメリカ国内における政治的な判断を俯瞰するようなコメントしている。
いうなれば、こうした自動車産業界の「ZEV慣れ」によって、ホンダに限らず自動車メーカー各社は、電動化規制に対する感覚が麻痺してしまった印象がある。中国のNEV(新エネルギー車)政策についても同様だ。
中国政府の関係機関である中国汽車技術研究中心(CATARC)と、カリフォルニア州CARBの研究開発実務を行うカリフォルニア大学デイビス(UCD)が連携し、ZEV法を参考としてNEV規制を作成したことで、「中国のNEVもZEVありき」という感覚が自動車メーカー各社の中にあると筆者は考えている。中国政府による中国自動車工業会の産業力強化という、政治・経済政策の位置づけが明確なのだ。
そのほか、2010年代にはオバマ政権のグリーンニューディール政策におけるEV開発やリチウムイオン電池開発の現場をアメリカ国内で数多く取材したが、多くの事案が「ZEVありき」という枠を超えていない印象があった。
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