大谷翔平選手がアメリカ社会を癒やす「必然」 「二刀流」だけでなく最高の笑顔がもたらすもの

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それにしても、着手から1年以内に複数のワクチンが政府の認可を受け、なおかつ億単位で現物が完成していた、というのはほとんど奇跡に近いのではないだろうか。何しろ今や、日本に居るわれわれもがファイザー社やモデルナ社製のワクチンを打っている。昨今は1日100万件以上のペースに達しているので、「ワープの速さ」とは言えないまでも「音速」くらいには到達していると言えそうだ。

もっともこのワクチン接種率、最近のアメリカでは頭打ちとなっている。ホワイトハウスでは、「7月4日の独立記念日時点で、成人人口に占める接種1回以上の比率を70%に」という目標を掲げていた。それが実際には67%にとどまっている。国全体として集団免疫を獲得するためには、もう少し比率を挙げておきたいところなのだが、「ワクチンを打ちたくない」という層は保守派や若者を中心に意外と根強い。このままいくと、共和党支持者が多いレッドステーツで再びパンデミックが深刻化、なんて事態も十分に考えられる。

連邦政府や州政府は、景品を提供したり賞金をつけたり、あの手この手でワクチン接種を促している。とはいえ、馬を水のある所へつれていくことはできても、馬が水を飲むかどうかは別問題。こうなると、「接種が済んだらマスク着用は不要」と早々と決めてしまったことも、結果としては早過ぎたかもしれない。

日本人にまぶしく映る今のアメリカ

ともあれ、われわれがテレビやネットで目にする最近のアメリカは、まぶしいほどに明るく、屈託なく映る。特にメジャーリーグにおける大谷翔平選手の活躍を伝える映像では、多くの野球ファンがマスク着用抜きで野球を楽しんでいる。それに引き換え、23日から始まる東京五輪は無観客開催ということになっている。

アメリカにおける現下の新規感染者数は、1万4000人程度(1週間移動平均)である。つまり今の日本よりも多いのだ。それでも彼らは、すでに最悪期を脱したという自信がある。死者数も目に見えて減っているし、医療体制にも余裕がある。ということで、前途を楽観している。東京五輪を報道するアメリカのメディアは、「日本の感染状況はたいしたことないのに、なんで無観客なんだろう?」と不思議がることだろう。

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