細田守がネット世界を「肯定」し続ける端的な理由 「竜とそばかすの姫」仮想世界で描く自由と恐怖
――正体を明かされることの恐ろしさをより引き立たせているのが、仮想世界<U>のアバターを作る際に「ボディシェアリング」という技術が使われている、という設定です。ユーザーの生体情報をスキャンするため、生身の人間の特徴が反映されるうえ、本人が仮想世界での経験を現実と同じように感じ取ることができます。
『サマーウォーズ』でもアバターが出てくるが、あくまで登場人物の「代理」で、そこまで本当の自分とアバターの二重性は重視されなかった。
それが今作は、ボディシェアリングをしてアバターを作るという設定によって、(仮想と現実における自分の)二重性がより切実に表現される。これにより、自由と恐怖が併存する仮想世界を、よりスリリングに描くことができた。
起業家から研究者まで30人以上を取材
――ボディシェアリング技術を研究する企業にも取材されたそうですね。
仮想空間の設定を作るうえでは、起業家から社会問題の研究者まで、30人以上の専門家に話を聞いた。
その中の1人としてお話を伺ったのが、スタートアップ企業・H2L(エイチツーエル)の玉城絵美さん。玉城さんは、(利用者がキャラクターや他者の身体とさまざまな感覚を相互共有する)ボディシェアリングの技術を具体的に提唱し、収益化しようとしている。
彼女からいろいろな研究のエビデンスを聞きながら、映画の中ではもっとその先、今は倫理的にタブー視されている、人間の脳のいろいろな部分にコンピューターがアクセスすることが可能になった時代の技術として、この設定を作りました。
――脳にアクセスすると聞くと、VRゴーグルのようなデバイスを装着することを想像してしまいます。ただ、作品に出てくるデバイスはイヤホンや腕時計、ピアスなど、手軽に装着できるものばかりです。
だって、女の子が大きなVRゴーグルを好んで装着するわけはないじゃないですか。
VRデバイスを発表する企業の展示会などに行くと、未来的でカッコいいデザインのデバイスが並んでいる。ただ、仮想世界が世の中に普及していくためには、もっとカジュアルでなくてはいけないはず。だから、映画の中ではあえて目立たないデザインにした。
実際、大袈裟なデバイスをつけずとも脳の視床下部をデバイスによって制御することで脳とコンピューターをつなぐ技術(ブレイン・マシン・インターフェイス)は開発されつつある。
あとは、僕らがこの事実を受け入れて個人と社会の幸せを追求していこうという段階にいつ入るか。そう考えると、この映画で描いている<U>へのアクセス方法は案外、近い未来かもしれない。
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