ソニーが映像のプロを驚嘆させた超ド級技の迫力 仮想空間で映像に圧倒的なリアリティを生み出す

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
バーチャルプロダクション技術を用いて、スタジオ内でまるで海外ロケを行ったかのようなCMが出来上がった(写真:ソニーPCL)
この記事の画像を見る(2枚)

モデルの女性が扉を開けると、その先には真っ青な地中海に浮かぶ船のデッキが広がる。別のシーンでは、同じく扉を開けるとイギリスの駅のホームにつながり、そこでモデルは生き生きと踊り出す。

アパレルメーカー大手のベイクルーズは6月上旬、運営するファッション通販サイト用のWeb広告を公開した。いくつもの国を巡って撮影されたかのように見えるが、実はこのCMは国内のスタジオで、わずか1日で撮影されたものだ。撮影後の編集も、通常なら数週間はかかるところ今回は数日で完成に至った。

これを可能にしたのが、ソニーグループが開発する映像製作技術「バーチャルプロダクション」だ。大型LEDディスプレーとカメラトラッキング、ゲームエンジンの技術を組み合わせて、まるで屋外ロケで撮影したかのような臨場感のある映像を簡単に作り出すことができるようになった。

コロナ禍における「ニューノーマル」な撮影手法

ファッション業界では必須だった海外ロケが新型コロナ禍での渡航制限で困難になる中、「ニューノーマル」な撮影手法といえる。

『週刊東洋経済』7月12日発売号(7月17日号)の特集は「ソニー 掛け算の経営」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

従来の屋外撮影では晴天や夕日が沈む瞬間などをカメラに収めるために何時間も待機するのが当たり前だったが、その必要もない。

一方で、映像のクオリティーに関してベイクルーズの担当者は「バーチャル映像なのに、違和感がないことに驚いた」と舌を巻く。

『週刊東洋経済』7月12日発売号は、「ソニー 掛け算の経営」を特集。ソニーの強みとリスクを分析し、復活したソニーの今後について分析している。エレクトロニクスメーカーから脱却し、新たな成長軸を模索するソニーが手掛ける新規事業の1つが、このバーチャルプロジェクションだ。

国内でこの技術の導入を進めているのが、ソニーグループ傘下の映像技術開発会社、ソニーPCLだ。2020年8月に本社内に実験用スタジオを開設した後、2021年4月には東京都世田谷区の東宝スタジオ内に設備を導入した。今回のCM撮影が初めての商業利用となる。

どういった技術なのか。簡単に言えば、大型LEDディスプレーに映像を映し、その前にセットを置き演者が動き回るというもの。ただ、それではいかにディスプレーの画像が鮮明でも、演者の動きに合わせた視点移動ができず、リアルな映像を作ることはできない。

そこで活用するのが、動き回るカメラの位置をセンサーで追跡し、背景画像の角度などを適切に表示させるようにする技術だ。

近年急速に発達するゲーム開発で映像処理を行うために用いられる「ゲームエンジン」を使うことで、瞬時に処理することができる。

このスタジオでは、ソニーグループが出資するアメリカのゲーム開発企業、エピックゲームスが開発したゲームエンジン「Unreal Engine」を使用している。

次ページ「クリエイターにとっての新たなおもちゃ」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事