エヴァの「マリ」TV版にはいなかったキャラの正体 新劇場版から登場、既存のエヴァ世界を壊す役割

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テレビアニメ版や旧劇場版では姿を見かけなかった真希波・マリ・イラストリアス(左から2番目)(写真:シン・エヴァンゲリオン劇場版公式サイト)
間もなく一部劇場を除いて終映を迎える、大ヒット映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。シリーズ26年の幕を閉じる本作は異例の平日・月曜公開ながらメガスタートを切り、涙ながらに積年の思いを「成仏」させたファンも多数生じた。
旧劇場版公開時に14歳だったそのひとり、批評家の藤田直哉氏が『エヴァンゲリオン』以降の庵野秀明作品の軌跡を徹底検証した『シン・エヴァンゲリオン論』。同書より、テレビアニメ版、旧劇場版には登場せず、新劇場版でデビューした謎の多いキャラクター、真希波・マリ・イラストリアスについて論じたくだりを一部抜粋・再構成してお届けする。
(記事中には、物語の内容や映画の結末について触れた箇所もあるため、ネタバレを避けたい読者はこれ以上、読み進めないようにくれぐれもご注意ください)

新キャラクターのマリとは何者か

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で新キャラクターの真希波・マリ・イラストリアスが登場するのは、第2作の『:破』からである。物語上でも、シンジとの関係性においても、さほど有機的に絡んでいるとは言えないのに、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の結末でシンジとくっつき、一部の『エヴァ』ファンに阿鼻叫喚を起こしたヒロインである。

『シン・』公開直後に匿名掲示板を見に行ったら、「LAS」と呼ばれる、シンジとアスカがくっつく世界を想像し2次創作などを楽しむ「ラブラブ・アスカ・シンジ」派が大荒れに荒れており、「ケンスケとアスカはくっついていない」などと無理筋の解釈・考察を生み出しているのを見て、マリというヒロインがどのように機能したのかを見せつけられる思いがした。実際、『エヴァ』のキャラクター文化批判の主題からして、キャラクターに過度に依存するファンたちに敢えて突きつける意図があったと考える方がいいだろう。

マリは、『エヴァ』世界を破壊するためのキャラクターである。庵野はマリについて、このような説明をしたと、鶴巻(和哉)が証言している。「『マリを登場させることによって、エヴァの世界を破壊する』ということ」であり、「マリが『破』というサブタイトルを象徴するキャラ」(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 全記録全集』)なのだと。そしてどのように破壊するのか、どのようなキャラなのかはなかなか定まらなかったが、どうも鶴巻が軽い気持ちで言ったアイデアなどが多く採用されたようだ(メガネを落として「メガネメガネ」と言うギャグや、胸を大きくすることなど)。

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