ぶっちぎりで上昇した海運株の今後はどうなるか 日経平均株価の上昇確率は以前より高まった

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ただ、それでも、ここからの日本株は上昇する確率が以前より高くなったと考える。具体的に言えば、7月以降の日経平均は、7月9日のザラ場安値2万7419円をボトムに、年後半(11月頃)に年初来高値3万0500円~3万1000円を目指す可能性が高まったとみている。これまではサブシナリオとして20~30%の確率とみていたが、今回メインシナリオとして55%の確率まで引き上げる。

逆に、これまで70~80%の確率で起きるメインシナリオとして掲げていた「年後半での(9月中旬前後)安値」(ターゲットは2万7000~2万7500円前後、高値から10%以上の下落)は今回の下落局面で、ほぼ前倒し達成した。そのため、こちらのほうは今回サブシナリオとして45%の確率まで引き下げる。

日経平均株価の再上昇には何が必要か?

では、今後の日経平均を見るうえでカギを握るのは何か。上記の7つの理由がなくなればいいわけだが、ズバリ①の「アメリカの10年国債利回り」がいつ上昇に転じるのかが最重要だ。10年国債の利回りは直近では7月8日に一時1.24%まで低下したが、これでほぼ下限レンジに達し、リバウンドが始まった可能性が高いとみている。そもそも日本株は世界の景気敏感株のはずである。このことからも、日経平均と連動していきそうだ。

残りの6つだが、②は株価下落でかなりリスクを織り込んだ。③④は国内の政局と密接に関係するが、株価の反応からは(時を味方にして)最悪期を脱し始めた。また⑤は東証再編(来年4月東証1部の「プライム」移行、TOPIXの銘柄数減少など)により緩やかに改善、⑥は一部に悪影響があるものの長期的なリスクのため、短期的には織り込まれた、⑦は一時的要因、と言える。

ただし、引き続きアメリカ景気(雇用、賃金、ガソリンや食料などのインフレ含む)に左右されることは間違いない。そのため、FRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和の出口議論の行方(8月のジャクソンホールでの会合や、FOMC会合)や、バイデン政権のインフラ投資を含む財政政策の行方に引き続き注目すべきだろう。

では、物色対象はなにか。「業績好調の上方修正銘柄」と「経済再開に伴うリオープニング(逆襲)銘柄」の「二刀流」で考えるのがいいのではないか。

まず、ハイテク銘柄のトップバッターである安川電機(6506)の四半期決算が9日に終了したが、同社を含め、7月末にかけて徐々に本格化する企業決算に注目する方法だ。

前回の3カ月前、同社株は好決算を発表したにもかかわらず、すでに株価が上昇して評価されていたこともあり「市場の期待を下回った」として売られ「安川ショック」が起きた。だが今回の決算では、業績は市場の予想を上回り絶好調だった。この流れ(業績モメンタム)をしっかりと確認したい。

2つ目は、国内の複数のイベントが依然カギを握っている。すなわち、①東京4回目の「緊急事態宣言」と「新型コロナワクチン接種」の行方、②ほぼ無観客となった「東京オリンピック・パラリンピック」、③秋の衆議院選挙の行方、などである。ただ時間を味方にできるのなら、もはやコロナ前に100%戻ることは考えづらく、経済再開相場(リオープニング相場の逆襲)にも期待したい。

このようにいかにバランス良く「二刀流」で投資することができるかがが、ポイントになるはずだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

糸島 孝俊 株式ストラテジスト

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いとしま たかとし / Takatoshi Itoshima

ピクテ・ジャパン株式会社投資戦略部ストラテジスト。シンクタンクのアナリストを経て、日系大手運用会社やヘッジファンドなどのファンドマネジャーに従事。運用経験通算21年。最優秀ファンド賞3回・優秀ファンド賞2回の受賞歴を誇る日本株ファンドの運用経験を持つ。ピクテではストラテジストとして国内中心に主要国株式までカバー。日経CNBC「昼エクスプレス」は隔週月曜日、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経ニュースプラス9」、ストックボイス、ラジオNIKKEIなどにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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