異例の「大規模デモ」キューバが置かれている状況 人々がSNSやネットで窮状を訴える姿も

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キューバは、その強力な後ろ盾であったソ連の崩壊後、極度の苦境に陥り、最終的には経済を観光客に開放し、非常にゆっくりではあるが、民間のビジネスや不動産所有にも門戸を開かざるを得なくなった。

ただし、現在の苦境との大きな違いは、キューバ人がスマートフォンでインターネットにアクセスできることであり、これは、政府が近年、国の経済を近代化するために仕方なく取り入れた改革である。

政府にとってネットは脅威であり、武器

アメリカ・キューバ貿易経済評議会のジョン・カヴリッチ会長は、1990年代の財政破綻時には「キューバ経済は、もっとひどいものだった」と語る。「しかし、今日存在するような次善策がなかったため、それについてのコミュニケーションは管理されていた」。

インターネットは、政府にとって脅威であると同時に武器でもある。キューバ当局は、通常はデモを迅速に鎮圧するのだが、今回は圧倒されてしまった。デモは、活動家らがソーシャルメディアのアカウントを使って、街頭に集まった群衆のライブ映像を配信し、人々に集まるよう刺激したことで、急速に全土に広がった。

「私は空腹であることに疲れたので、街に出ました」とサラ・ナランホさんは、ツイッターで共有した動画の中で語った。「私には水がありません、何もないんです」。

しかし、インターネットへのアクセスを監視しているケンティックインクのインターネット分析ディレクター、ダグ・マドリー氏によると、11日の午後に、島中のインターネットへのアクセスが約30分間にわたって停止し、接続は12日の午後の時点でも断続的な状態が続いているという。

そのため、多くの活動家が身柄を拘束されたという報道を裏付けることが難しくなっている。12日にソーシャルメディアに投稿された動画には、当局が街を練り歩いて人々を乱暴に拘束し、警棒で殴ったり、地面に倒れた人々を蹴ったりしている様子が映っていた。

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