アルツハイマー「根本治療薬」専門医はどう見るか 「アデュカヌマブ」日本導入の可能性と課題は?

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アルツハイマーの治療薬「アデュカヌマブ」の研究に参加する男性(写真:AP/アフロ)

「これまでずっと治験の最終段階で跳ね返されていたのが、対象者や評価法を改良した結果、ようやく承認に値する結果が得られたというのはあると思います。しかし、承認されたからといって100パーセント喜んではいません。まだ第一歩、風穴を開けた程度というところです」(順天堂大学医学部名誉教授の新井平伊氏)

6月7日、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、認知症の根本治療薬と期待されている「アデュカヌマブ」の製造販売の承認をした。「アデュカヌマブ」とは、日本のエーザイとアメリカのバイオジェン社の2社が研究開発した薬で、株価は両社とも翌日大幅に値上がりした。この新薬への期待は世界的にみても大きいといえる。

「アデュカヌマブ」は認知症の根本治療薬と言われているが、従来の認知症治療薬とどこが違うのか、また今後の課題等について、アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学が専門の新井平伊(あらい・へいい)順天堂大学医学部名誉教授に聞いた。

結局、従来の薬と何が違うのか?

――「アデュカヌマブ」は根本治療薬と呼ばれていますが、従来の薬との相違点は?

「一言でいうと薬のターゲットが違います。アルツハイマーの原因としては『アミロイドβ仮説』というものがあります。通常、脳の神経細胞膜にあるアミロイドβタンパクは、分解され、代謝されて血液中に流れていくのですが、脳の中にたまってしまうと、神経細胞の働きの邪魔をします。神経細胞の働きが悪くなると『アセチルコリン』が減少してくるし、最後は多くの神経細胞が死滅し脳が萎縮してくる。これが『アミロイド仮説』です。

従来の薬は『アセチルコリン』の減少を改善するものですが、今回承認された『アデュカヌマブ』は、アミロイドβタンパクを減らす治療薬になります。従ってメカニズムがまったく違うのです」

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