老いのかたち 黒井千次著
近頃は人が歳を取れなくなったといわれる。今の60歳にはかつての60歳の重みはなく、現在の70歳には昔の70歳の威厳は見られない。それは元気な高齢者が多くなったからか、老熟した年寄りが少なくなったからか。
以前の年齢が備えていた老熟の風格は、とうに失われてしまっていると著者は見る。ここ半世紀の日本人の生き方が、なし崩しに昔の老人像を蝕み、その過程には家族のあり方や相続の問題、女権の拡張や医療技術の発達など、さまざまな要因が絡まりあっているという。
昭和一ケタ生まれの作家が、自らの日常を通して現代日本の老いと世相を探る。冷静な観察眼と深い内省が印象深いエッセー56編を収録。
中公新書 798円
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