しかしながら、自動化とAIの複合的な効果によって、大勢の人が仕事を失う可能性があることも事実だ。技術に仕事を奪われる現象は、もはや未来の可能性ではなく、厳しい現実である。だからこそ、『2030』で述べたようにベーシックインカムの導入や、もしくはロボットに税金をかけるような政策には効果があるだろう。
最後に取り上げるのは、世の中を変える可能性が最も高い破壊的(ディスラプション)技術の1つだ。私たちは将来、政府や中央銀行が発行した少数の通貨ではなく、さまざまな仮想通貨を使って、決済したり貯金したりしているだろう。
世界を根本的に変えた発明は数えるほどしかない。だが、火の利用、車輪、印刷機、蒸気機関、抗生物質と並んで、お金はそのとても短く特別なリストに名前があがる発明品だ。お金を使わない物々交換は、はるかに低い生活水準しかもたらさない。
外国人排斥は自滅の道を開くだけ
そうは言っても、仮想通貨自体はそこまで成功しないだろうというのが私の考えだ。その理由は、金融政策や貨幣供給のコントロールを失うことを恐れて、政府が仮想通貨の普及に歯止めをかけるだろうからだ。日銀やFRBがどう考えるかは、想像するしかない。
私の予測では、仮想通貨が成功するのは、デジタルな割引券やインセンティブ(景品)、スマートコントラクト(契約の自動化)、あるいはそのほかの「デジタルトークン(電子暗号)」のような要素と組み合わせて利用される時だ。それが未来だ。そしていったん、仮想通貨が経済効率を高める莫大な可能性に気づいたら、異議を唱える政府や中央銀行はほとんどなくなるだろう。
そのような変化は、日本だけでなく東アジア諸国、世界全体に影響を与える。国全体として変化に対応する唯一の方法は、世界の動向と一体化し、世界との相互接続を深めることだ。そうすれば、そこから生まれる巨大な好機をうまく活かすことができる。外国人排斥はもちろん保護貿易主義や大衆迎合主義は、長期的に見て自滅への道を開くだけである。最善の方策は、自国の社会と経済をグローバルな動向に合わせることだ。
コミュニティや個人もまた、困難の先にある大きな機会に気づく必要がある。最も重要なのは、世界が変化しているという現実を受け入れることだ。私たちは極めて大きな、真の変化のただなかに生きている。私たちが変化に対応する準備ができるのを、時の流れは待ってくれない。時計の針も戻せない。
変化に対応するただ1つの可能な方法は、変化に対応する方法そのものを変えることだ。その現実を受け入れたなら、未来へのカギは、新たな状況に適応する決断を下し、状況の変化によっては決断を修正することにある。それが『2030』のメッセージだ。そう心に刻み、行動を起こそう。
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