オンラインショッピング、リモートワーク、そして保護貿易主義や外国人排斥といった反グローバル化の動向は実際、極めて重要だが、だからといって必ずしも自称専門家たちが提唱する方向に向かっているわけではない。もっと視野を広げれば、グローバリゼーションのプロセスは減速しているのでも逆転しているのでもなく、変化しているのだ。
これから見る日本の例でもそれは明らかだろう。
長い目で見れば、日本は今回のパンデミックの影響を、世界のほかの地域ほどはネガティブに受けないだろうと私は考えている。日本はすでに超高齢社会であるため、高齢化の動向はほとんど加速しない。日本はまた、製造業とサービス業においてますます統合が進む、ダイナミックな東アジア経済に属している。同様に、企業が将来的な業務の中断を回避しようとして自動化の気運が高まったが、日本はすでにロボット工学の分野で世界的なリーダーだ。
だが、未来は不透明だ。私は1990年代中頃に一度だけ日本を訪れたことがあり、自動車、電子機器、鉄鋼、銀行、保険など多くの企業を視察した。日本企業は以前と変わらず革新的であるにもかかわらず、経済は長期にわたって低迷している。人口の3分の1以上を60歳以上が占めることによる財政的、経済的な課題が、地平線の上に大きく迫っている。
移民がもたらすダイナミックな影響
『2030』で紹介したさまざまなメッセージのなかで、とりわけ日本に当てはまるものが2つある。1つは、移民がもたらすダイナミックな影響についてだ。日本には移民の伝統がないことは、私もよく理解している。おそらく、日系移民がブラジルの企業や経済部門に果たした中心的な役割に注目することが重要だろう。ブラジルにはいまも、日系移民の子孫が多く暮らしている。
移民について考え方を切り替えるのは難しい。特にあちこちの国が移民に厳しい態度をとっている時代であればなおさらだ。だが、日本も移民を受け入れることで、アメリカが移民から大きな恩恵を受けたのと同じくらい、大きな利益を得られるはずだと私は確信している。
日本に対する2つ目のメッセージは、技術そのものは強い影響を及ぼさないという点である。ほとんどのイノベーションは、既存技術の新しい創造的な活用方法を見つけ出すことにある。
日本企業はデジタルプラットフォームやデジタル経済全体を裏で支える、多くの技術を発明したり完成度を高めたりしてきたが、世界規模の日本のデジタル企業はほとんどない。私の意見では、日本経済が1970~80年代の全盛期に戻ることが重要だ。当時の日本は、製造現場での斬新な生産方式、ずば抜けた製品、輸出の伸びにおいて世界を牽引していた。
日本はリモートワークとギグエコノミー(オンライン上のプラットフォームなどを通じて行う短期的な労働のこと)のリーダーになれる可能性がある。そのどちらも、60歳を過ぎても仕事を続けたい、少なくとももっとフレキシブルにパートタイムで働きたい人たちに、非常に好まれる働き方だからだ。
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