日本は世界でも極めて生活水準が高く、平均寿命もトップレベルだ。日本経済復活の秘訣は、あらゆる世代の才能と経験を結集し、一丸となってグローバル経済で競争することだ。
『2030』のなかで私は、女性が社会と経済に果たす新たな役割について強調した。日本は、世界でも女性が握る富の割合が高い国の1つである。日本の女性の平均的な教育水準は並外れて高いにもかかわらず、中間管理職や経営陣として活躍する女性の数はいまも限られている。
多くの女性が家庭の外で働く国のほうが経済が速く成長し、高い生活水準をもたらすことは、秘密でも何でもない。移民のほかに、日本が21世紀の課題に人口動態的な方法で取り組む2つ目の方法は、女性の活躍にある。
デジタル化の潮流には抗えない
新型コロナウイルス感染症が経済に及ぼした影響が最も明らかなのは、技術の世界である。パンデミックは、遊び、学習、仕事、ショッピング、エンターテインメントの分野で、デジタルプラットフォームの利用を大きく加速させた。
だが、コロナウイルスによって発達が進んだ技術はそれだけではない。自動化の傾向が強まったのだ。今回のような公衆衛生上の緊急事態も含めて、自然災害に見舞われた時には、人間の労働者よりもロボットのほうが、信頼性が高いことに企業は気づいている。
ソーシャル・ディスタンシングの時代に、サービス部門において顧客と従業員とのやりとりのあり方は変更を迫られ、自動化は新たな好機を提供する。こうして私たちは、ロボットの数が労働者の数をしのぐことになる新たな時代を目撃している。大きな成長が見込まれる別の分野はナノ技術、すなわち分子と分子以下の構造を操作する技術である。その目的は、より耐久性に優れ、高効率で用途の広い原材料をつくることだ。
私は『2030』のなかで、2030年になる頃には、人間の脳よりも多くのコンピューター──正確に言うと、マイクロプロセッサー──が世の中に溢れているはずだと予測した。モノのインターネット、ブロックチェーン、そのほかの革新的な技術は経済を変え、企業や組織が内部で機能する方法を変え、サプライヤーや顧客と関わる方法も変える。
重要なのは、人間をAIや機械学習に置き換えることではなく、人間とデジタル機器との労働の役割分担が、より高い生活水準をもたらす方法を見つけ出すことにある。
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