たった一晩の睡眠不足を甘く見てはいけない理由 ぐっすり眠れていないと体と心に影響を及ぼす

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だからこそルガヴェア氏は、「本書を読めば、健康になるためには何が必要かを深く理解できるだろう」と記しているのだ。たとえばその必要なことの1つが、毎日の習慣をほんのちょっと変えてみること。

そうするだけで明るい気持ちになり、将来の健康を大きく改善できることがわかるというのだ。これは、健康的な日常生活を送ることの大切さを説いてきた、過去のさまざまな論文や主張とも重なる考え方ではないだろうか?

どこか1カ所に手を加えればすべてが改善するというような問題ではなく、バランスが大切だということ。だから本書の守備範囲も広いのだろうが、今回はその中から、「睡眠」に関する考え方に焦点を当ててみたい。

睡眠が私たちのからだに与えるパワフルな効果

「ジーニアス・ライフ」にとって、からだにいい食生活を送り、太陽の光を浴びることと同じくらい重要なのは、質の高い眠りだ。睡眠は血圧と血糖値を下げ、ホルモンを調節し、代謝を促し、からだを強くしてくれる。究極のアンチエイジングであり、とりわけ脳を若々しく保ってくれる。(247ページより)

睡眠の効果についてはよく知られたところだが、それは、睡眠不足になると逆のことが起きてしまうということでもあるだろう。ルガヴェア氏もここで、睡眠時間が慢性的に4時間未満の人は、認知能力の脳年齢が一気に8歳も進んでしまうという話を引き合いに出している。

どうあれ慢性的な睡眠不足が、からだのあらゆるシステムに影響を及ぼすであろうことは想像にかたくないのだ。そして、その一部は代謝機能の低下が原因で起きるのだという。

動物実験でも人間の臨床試験でも、睡眠時間が減ると、インスリン感受性が低下し、グルコース代謝に異常が現れるそうだ。からだがより多くのインスリンを生成し、血糖値が高いままの状態が続いてしまうということだ。

アメリカ内分泌学会が発表したある研究によれば、睡眠時間がたった一晩、8.5時間から4時間に減っただけで“一夜にして”代謝性肥満が生じるのだという。それは、体重が9~14キロ増えたときの影響に相当する。肝臓で糖と脂肪の産生が増え、血糖の効率的なコントロールができなくなっていたことが原因であるようだ。高血糖は血管を傷つけ、脳を含む全身の器官に酸素を運ぶ血管の働きを阻害するので、影響は決して小さくなさそうではある。

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