たった一晩の睡眠不足を甘く見てはいけない理由 ぐっすり眠れていないと体と心に影響を及ぼす

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だが、そうした影響は避けられるものでもあり、元に戻すことも可能。つまり、睡眠の質を向上させればいいわけである。

睡眠はまた、脳を毎晩、脳脊髄液に浸すことで冴えた頭脳を維持する。この脳の洗浄プロセスは睡眠中に必ず起きる。脳内には、グリンパティック系(グリア細胞+リンパ系の造語)と呼ばれる配管システムがある。この脳内リンパ系のおかげで、睡眠中に脳脊髄液が脳内に滲み出して、有毒な老廃物を押し流してくれるのだ。睡眠の裏をかくことはできない。眠っているあいだにグリア細胞が60%も収縮して大きな隙間をつくり出し、脳脊髄液が流れ込みやすくなるからだ。(248ページより)

メンタルヘルスの面から睡眠を考える

ルガヴェア氏は、年齢に関係なく、睡眠の重要性をメンタルヘルスの面から考えてほしいと訴えている。

現代では心の問題に苦しんでいる人は少なくないが、成人の6人にひとりは薬で対処しようとし、しかも多くの人が長期にわたって服用する。問題は、睡眠障害がほぼすべての精神疾患に影響を及ぼすということだ。長引くうつ病の原因は睡眠障害にある、と結論づける研究結果も増えてきたという。

睡眠とうつ病との関係は、つまるところ、脳の奥深くに位置する扁桃体に行き着くのかもしれない。このアーモンド型の部位は負の情動に深く関わり、“恐怖センター”と呼ばれることも多い。不確実な出来事が起きた時の脳の反応を調整する。不確実性は常にリスクを伴うからだ。(249ページより)

睡眠が足りているときには、前頭前皮質の“理性の声”が扁桃体の働きを抑制する。前頭前皮質がその抑制効果を解除するのは、本当に危機が訪れたときのみ。ところが睡眠不足になると、その仕組みが機能しなくなるのだそうだ。

過敏な扁桃体は、ささいな出来事でも大きなストレス要因と捉える。驚くべきは、たった一晩睡眠不足だっただけで、扁桃体が約60%も反応しやすくなるというルガヴェア氏の指摘だ。たとえば睡眠不足のときにイライラするのも、それが理由であるようだ。

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