入居1年の本社売却…HISが狙う来期黒字の現実味 厳しい環境でも衰えない「澤田会長」の成長意欲

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資金確保を急ぐ背景には、足元の業況の厳しさがある。2020年11月~2021年4月の中間決算は、売上高が前年同期比8割減の676億円、営業損益は310億円の赤字(前年同期は14億円の赤字)に終わった。

旅行事業は主力の海外が期初からほぼゼロ状態。国内旅行の開拓を進めるが貢献は小さく、180億円の赤字だった。電力小売り事業も冬場の仕入れ価格の急騰が響き、77億円の赤字と足を引っ張った。

ホテル事業も苦戦が続く。売上高の過半を占める海外ホテルは日本人客を迎えられず、2~4月の稼働率は約30%と低迷。テーマパークも修学旅行を取り込んだが、小幅赤字だった。

経営陣の視線は来期の黒字化へ

最新実績である5月の海外旅行取扱高はわずかに3億円、国内旅行も7億円強だ。後半に国内事業の回復や最大1500人規模の出向による経費削減があっても、通期で数百億円レベルの赤字は避けられない。財務の大幅な悪化が予想される中、どれだけ資金を確保しても十分ということはないのだろう。

ただし、HIS経営陣はすでに来期を見据えている。6月の決算説明会で澤田会長は「各国でワクチン接種が進行するなどレジャー需要は回復局面へ向かう。コスト削減効果と合わせ業績はボトムアウトしていく。2022年に黒字化をぜひ目指したい」と語った。

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