日本人は豪雨災害がなぜ起こるかをわかってない 大地の固有の凸凹「流域」を知らないと命が危ない

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ところが、現状はその緊急事態とも言える状況に、社会が長きにわたり、適切に対応できずにきたのです。一般社会のレベルだけでなく、報道や自治体のレベルでも同じことが言えるのです。

まずは、地図が問題です。豪雨を引き起こす水土砂災害は、大小のスケールにかかわらず、「流域」という地形や生態系が引き起こす現象です。「流域」とは、雨の水を河川・水系の流れに変換する大地の地形のことです。「流域」の構造を知ることで、水土砂災害に備える考え方や行動ができるのですが、実際には、私たちが利用する通常の地図にはほとんど反映されていないのです。

流域の構造。A川流域とB川流域は隣りあっている。さらに流域はそれぞれがジグソーパズルのように入れ子状になっている(イラスト:たむらかずみ、出所:『生きのびるための流域思考<筑摩書房>)

氾濫を起こすのは川ではなく「流域」

2021年の今日まで、私たちは、学校でも、市民社会でも流域については学ぶことなく過ごして来ました。

それは、行政も市民も同じです。水土砂災害は都道府県・市町村の行政単位で発生すると考えている行政職員や市民は少なくありません。防災・被災の情報が、いつも行政地図を元に報道されてきたことに、わたしたちは慣れきってしまっていたのかもしれません。

それだけではなく、気象庁も国土交通省も、「水土砂災害は河川が引き起こす」と、ついつい、強調してきました。氾濫を引き起こす構造として、確かに河川は水土砂災害の直接的な原因のように見えます。

しかし、その河川に大量の雨水を集める大地の広がりは「流域」であり、雨水や降水による氾濫やさらにそれらを水土砂災害を引き起こす川の流れに変換するのは、「流域」という地形であり生態系です。つまり、氾濫を起こすのは、川ではなく「流域」なのです。これが、水土砂災害を考えるうえで、わたしたちがいま確認すべき、最も重要なポイントです。

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