『生きる哲学 トヨタ生産方式』を書いた岩月伸郎氏(デンソー顧問)に聞く

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--トヨタの工場では自主的にラインを止めることができますね。

ラインで毎日同じことを繰り返して作業しているだけでは、生きがいを見つけ出せ、感じろと言っても、それは無理と大野さんは言っていた。もっといいやり方はないかを考える。それを具体的に提案して実現する。それがないと生きがいを感じることはなかなか難しいとも。

--自身のデンソーでの「雇い止め」回避も、その反映ですか。

リーマンショックの後も、従来どおりの雇用を継続した。他社のような「雇い止め」をせず、結果としてほぼ半年で仕事がない状態は解消した。雇い止めをしていたら、いろいろな傷が会社に残っただろう。

大野さんはかねがね「無茶苦茶に忙しいときにも、今いる人間だけで頑張ることが大事」と言っていた。実はデンソーは、その前年、前々年と従業員の採用を徹底的に抑えた。それだから乗り切れた。

--今回、トヨタに「リコール問題」が起きました。

リーマンショック前まで、ちょっと売れすぎた。ここで立ち止まって、身辺を見直してみるのは必要だと思うし、ある意味ではいい機会になった。

(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済2010年6月5日号)

いわつき・しんろう
1945年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)に入社。トヨタ生産方式と出会う。生産方式の生みの親である大野耐一氏からも直接指導を受け、社内やグループ会社への導入に携わる。取締
役ヨーロッパ・アフリカ本部長、デンソー常務・専務・副社長など歴任。

『生きる哲学 トヨタ生産方式』 幻冬舎新書 819円


  
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