『生きる哲学 トヨタ生産方式』を書いた岩月伸郎氏(デンソー顧問)に聞く

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--張会長が若い時代に書いた関連の社内文書はありますね。

世間に誤解が出てきたので、これはいけないなということで、1972年から73年にかけて張さんが「トヨタ生産方式」という書き物をまとめ上げた。それも内部の資料として、語り合ったり行動したりするときに一つの基準にしようという使い方だった。直弟子で本を書いた人は今までいなかった。

大野さんはこんなことも言っている。「百聞は一見にしかず」をもじって、「百見は一行にしかず」、つまりは「100回、あるいは100の対象を見るよりは、自ら一つ行動してみる。そのほうがよほど大事だ」と。うまいことを言うなと思った。活動を重視するから紙に書いて残すこと、評論することを否定する。むしろそのことで、行動に目を向けさせようとしたところがある。

--大野さんの直弟子とは。

圧倒的に張さんとは密度が濃かった。入社2年目の私をしかった鈴村(喜久男、故人)さん、あと数人はすぐに思い浮かぶ。ダイハツ工業社長の箕浦(輝幸)さん、トヨタの取締役に復帰した林(南八)さん、元トヨタ紡織会長の好川(純一)さん、元関東自動車工業会長の内川(晋)さん、らのあたり。

--生産方式の根底に流れる「人間尊重」について、大野さんの言葉や行動が何回も引用されています。

人間の能力に強い信頼感を持っていた。人にもっと知恵を出せ、その知恵が役に立つと素直に心から要求した。人間の能力における信頼と、その裏返しである人間尊重。それがまた品質、つくりすぎのムダの徹底的な排除に結び付く。

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