意外と知らない「血糖値」高いと何が起こるのか 免疫機能が低下し感染症にもかかりやすくなる

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血糖の調整で大きな役割を果たしているのがインスリンです。長年にわたって暴飲暴食を続けていると、食事のたびにブドウ糖を処理しなければならず、大量のインスリンを分泌するため、すい臓は疲れてしまいます。

一方、ブドウ糖をとり込む筋肉や脂肪細胞などもインスリンの刺激に慣れてしまい、多少の刺激ではブドウ糖を引き受けてくれなくなります。そのため、さらにインスリンが必要となるばかりか、上がった血糖値がなかなか下がらなくなります。これが糖尿病の入り口です。

食事量を減らすために、食事を抜けばいいかというとそうではありません。食事を抜くと、次の食事で食べすぎてしまうため、血糖値を急激に上げる原因になります。間食も、血糖値が下がりきる前に血糖値を上げてしまうため、次の食事のあとに高血糖になりやすくなります。規則正しく、栄養バランスをとりながら食べることが大切なのです。

運動不足も糖尿病の原因です。運動する習慣があると、血糖が増えても、筋肉細胞は「次に運動するエネルギー源にしよう」と自主的にブドウ糖を血液中から引き寄せます。そのためインスリンをあまり浪費しません。

この働きは、筋肉中にある「GLUT4(グルットフォー)」というたんぱく質が担っています。このGLUT4を増やすには、運動が欠かせません。運動不足の人はGLUT4が少ないため、インスリンを大量に出して血糖を下げるしかありません。その結果、インスリンを浪費してしまうのです。

ストレスも高血糖の原因に

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ひとつ見落としてはいけないことに、ストレスがあります。緊張感やストレスを感じているとき、体は闘いに備えて戦闘態勢になっています。

闘いでは、すぐに使える血液中のエネルギーを通常より多めに用意しておくほうが有利。そのため、すぐに脳や筋肉で使えるブドウ糖は、血液中にいつもより多く蓄えられます。

つまり、血糖値は高めになるのです。ふだんからストレスをかかえている人は血糖が多めの状態が続くわけですから、糖尿病にもなりやすいというわけです。

糖尿病の予防のためにストレス発散が必要なのは、このような理由によります。食べすぎない食生活と適度な運動習慣。ストレスを遠ざけ、よい睡眠をたっぷりとる。これが糖尿病予防の柱です。

福田 千晶 医学博士、健康科学アドバイザー

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ふくだ ちあき

1988年に慶應義塾大学医学部卒業後、医師として東京慈恵会医科大学リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。本の執筆や講演では、わかりやすい家庭医学や健康についての解説、とり入れやすい生活改善法に定評がある。日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医

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