国際的な金融規制強化、経済危機に拍車をかける副作用の面を軽視するな


 しかし、同規制には、もう一つ大きな論点がある。

従来、8%だった自己資本比率(目標値)の引き上げだ。新たな目標値は12%である。銀行の健全性向上のためには自己資本比率が高いほうが望ましいことは言うまでもない。しかし、その一方では、銀行の機能である信用創造機能の後退にベクトルが働く。

資本1がどの程度の信用創造を行えるのかという尺度である信用乗数は、従来の8%では12・5倍だ。しかし、12%の自己資本比率の下では信用乗数は8・3倍に低下。その差である4・2(倍)の部分は圧縮となる。

その際の銀行行動は、自己資本比率低下への警戒感から安全資産への投資に傾きやすい。量、質両面から信用創造機能は弱まらざるをえない。

自己資本比率規制以外でも、デリバティブ規制、ヘッジファンド・プライベートエクイティへの投資に関する規制、あるいは、ドイツが実施したカラ売り規制等々、新規制は枚挙にいとまがない。いずれにしても、自己資本比率規制が銀行の健全性に資する一方で、信用創造機能の弱体化につながりかねないのと同様に、政策目的のほかに副作用的な面がもたらされるリスクを否定できない。

たとえば、デリバティブ規制は銀行にデリバティブの利用を制限するものであり、昨今、国際金融市場を震撼させたクレジット危機の防止という観点からは好ましい。しかし、そうした措置の導入が議論され、予定されるほどに、デリバティブ市場には流動性が枯渇し、資産価格の暴落まで誘発しかねない。

要は、マーケットはつねに先読みして動く。ドイツが5月19日にユーロ圏の国債、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の現物手当てのないカラ売り禁止措置を適用開始するや、世界の金融・資本市場が暴落したという最近の出来事を振り返れば、マーケットの動きがどういうものであるかは理解できるだろう。

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