(第17回)90年代以降の投資減少はバブル崩壊によるものか?

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 以上を考えれば、「銀行の貸し渋りが原因で日本経済が長期の停滞を続けた」という説明は、到底受け入れられないものだ。

実際に生じたのは、資金需要そのものの減退である。それは、設備投資に対する需要が減退したからだ。

つまり、「銀行が貸してくれないから設備投資ができなかった」のではなく、「企業が設備投資意欲を失ったために、銀行から借りなくなった」のだ。その結果、利子率が低下したのである。つまり、原因は、資金の貸手側ではなく、借手側にある。

住宅投資に関して言えば、日本は人口の減少プロセスに直面しているため、長期的に見ると、住宅需要は増加しないはずである。しかし、80年代後半のバブル期には、値上がり益目当てでの住宅購入が増加した。その結果、住宅ストックが過剰となり、住宅投資が減少したのだと考えられる。

バブル崩壊が日本経済の様相を一変させたことは事実だ。しかし、それは、それまで水面下に蓄積されていた基本問題を顕在化させるきっかけだったと考えるべきだろう。重要なのは、80年代からすでに生じていた問題だと認識することである。それがバブル景気の中で見えなくなっていただけのことなのだ。

【関連情報へのリンク】
日本銀行、時系列データ検索サイト、預金・貸出関連統計


野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。


(週刊東洋経済2010年6月5日号 写真:今井康一)
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