63歳元記者が司法試験合格、甘くない9年の道のり 「サラリーマン人生見えた」50代からの奮起

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最終合格発表は例年9月で近年は約1500人が合格する。2020年の試験は3703人が受験し、1450人が最終合格した。論文試験はすべて長文の事例問題である。たとえば、2020年の憲法の問題を簡単に説明するとこうである。

生活路線バスを守り、一方で一部の観光地などの交通渋滞に対処するため
(1)儲かる高速路線バスの運行は、生活路線バスを運行する事業者のみ認める。生活路線バスへの新規参入は、既存の生活路線バスを運行する事業者の経営の安定を害さない場合に限り認める
(2)特定渋滞地域において特定時間、域外からの自家用車の乗り入れを原則禁止する、という立法が検討されている。
法律家として(1)(2)の規制の憲法適合性について論じなさい。

ボールペンを持つ手が震えた

勉強を始めて最初に買った小六法。何度も条文を読み、書き込みをして意味を理解していった(写真:AERA dot.編集部)

憲法の教科書を見ても同じ事例は載っていない。憲法が保障するどんな権利に対する制約かを条文を含めて指摘し、規制の内容や関連する判例を踏まえて違憲か合憲かの判断基準を立て、基準に問題文の事実をあてはめて違憲、合憲の結論を出す。結論はどちらでもいい。論述の説得度に応じて点差が開く。ちなみに、私は規制(1)は憲法22条1項の職業選択の自由、規制(2)は同項の居住、移転の自由に含まれる移動の自由がそれぞれ問題となると考える。

私の試験に話を戻す。17年の順位は3100番台後半で、まったく合格に届かなかった。18年は前進し1900番台前半になった。しかし、「今度こそ」と意気込んで臨んだ19年は2400番近くに下がってしまった。

19年は緊張のため選択科目でボールペンを持つ手が震えた。試験期間中はベッドに入ってもなかなか寝付けなかった。たいした力もないのにこんな精神状態では受かるはずがなかった。当然の不合格である。

3回連続して不合格になると「次もだめでは」と自分自身に「推定不合格」の烙印(らくいん)を押してしまう。その上、大改正となった民法が20年から試験問題に出るため、勉強をし直さなければならなかった。追い込まれた。

そんなとき、通っていた資格試験の予備校「LEC」で講師に「受験までに論文を200本書いた人で落ちた人は知らない」と言われた。この言葉にすがって、とにかく過去問を起案することにした。軸が細いボールペンでは手が痛くなるので太い万年筆に変えた。

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