描ける?藝大「奇想天外な入試問題」に隠れた意図 藝大美術学部に個性豊かな人材が集まる理由
藝大の卒業生で、あるアーティストの方から聞いた話があります。藝大以外の各美大受験については、実技試験の傾向と対策があり、予備校講師は各美大の出題傾向に合わせて指導するとのことです。
しかし、こと藝大受験に関しては、出題される試験課題の傾向がない。そのため美術予備校では「藝大を卒業した講師たちが、過去問も参考に、藝大の先生たちが出しそうな課題を考え、その課題で受講生が絵を描く」というのを繰り返すそうです。
実際の試験問題を見てみると…
では、実際にはどんな試験問題が出題されるのでしょうか?藝大に限らず、美術系の大学の入学試験は、学科試験と実技試験に分かれます。たとえば、油画専攻の具体的な試験科目としては、①センター試験(現・大学入学共通テスト)、②第1次実技試験(素描=デッサン)、③第2次実技試験(絵画=油絵)となります。
2020年度までの2年間の油画専攻の入試問題は次のとおりです(東京藝大ウェブサイトより。出題に関わる条件や注意書きなどの詳細は場合により省略)。
出題 「三つの手」
【条件】「りんごを持つ手」「紙を持つ手」「何も持たない手」の全てを描くこと。
【モチーフ】りんご・トレーシングペーパー
出題 絵を描きなさい。
【条件】
・カンバス、スケッチ用紙を試験室から持ち出すことはできません。
・制作にイーゼルを使用する場合は、室内の置き場所から1人1台持ってきてください。
・また、椅子は1人2個まで使用できます。
出題 世界に目を向ける(Looking at the world.)
世界を見通す(Seeing through the world.)
世界を映す(Reflecting the world.)
枠内の言葉をテーマに描きなさい。
出題 世界に目を向ける(Looking at the world)
世界を見通す(Seeing through the world)
世界を映す(Reflecting the world)
枠内の言葉をテーマに描きなさい。
また、過去の試験では、上野動物園や葛西臨海水族園にいる動物や生物を自由に選んで描くということもありました。このように、予測不可能な問題が毎年出題されるのです。
2019年度(平成31年度)からは、入試問題の出題意図も藝大のウェブサイトで公表されていますので、少し長いですが引用します。
本専攻の入学試験は思考力、観察力、表現力を重視し、面接試験を含めた総合的な評価により芸術家としての可能性を見出すものである。
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