「共産党100周年」中国の若者達が語る党への本音 20代が考える入党のメリットとデメリット

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中国の若い世代と話していると、彼らは「愛国」ではあるものの、それが「愛党」と直結していないと感じる。共産党員になることへの20代の共通見解は、「就職や昇進に有利」「希望者は大勢いて競争が激しい」「親が喜ぶ」だ。

中国西部の省で銀行に勤める20代女性は、「昨年のコロナ禍のとき、党員がボランティアで感染者を輸送したり、住民を統率しているのを見て、共産党が社会の安定に貢献していると実感した」と愛党精神を口にしたが、同時に「私は予備党員だけど、早く党員になりたい。昇進にも有利ですし」と、やはり「昇進」という言葉が出てきた。

日本の大学院に留学し、日本企業に就職した李強国さん(仮名、26歳)は、日本社会と比較しながら説明してくれた。

「僕は愛国ですが愛党ではありません。日本人だって母国を愛していることと政府を支持するのは同じことではないでしょう」

中国人は総じて、地縁血縁を重視する傾向があり、その延長に愛国がある。最近は、アメリカとの対立によって「中国が理不尽にいじめられている」という認識が広がっていることや、「党と国民が一致団結してコロナを早期に封じ込めた」という自信も、愛国心を高めているように見える。

李さんは、「愛国と愛党は別次元です。僕たち庶民にとって、共産党員になるのは『上級国民』になるという感覚です」という。

入党できなかった父の影響

大学時代に成績優秀だった李さんは、党員になる研修を受けられたが、思うところあって距離を置いた。

「僕は高校の頃から、大人になったら海外で暮らしたい、できれば国籍も取得したいと思っていました。海外で中国の共産党がどう見られているか、大学に入る頃には知っていたし、海外就職で不利になりたくなかった」

ただ、李さんは「中国人は義務教育で愛国、愛党教育を受けるので、世の中のことが分からないうちは愛党精神が強いのが普通。僕は特殊なパターン」とも言った。

李さんの父方の祖父は、共産党と対立して台湾に逃れた国民党のメンバーだった。李さんの父は身内に国民党関係者がいたため、共産党に入党できず、社会のさまざまな場面で不利な扱いを受け、望む道を歩めなかったという。

李さんは父から、「共産党は社会の基盤だから、お前は党員になってほしい」と言われて育った。だが、党員になれないコンプレックスを引きずり続けた父を重く感じ、むしろ党の支配の及ばない場所に行きたいとの思いを強めた。

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