小此木氏、「横浜市長選出馬」の複雑怪奇な舞台裏 横浜へのカジノ誘致反対で菅首相に反旗か

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こうした市長選をめぐる一連の動きについて、永田町では「誰が味方で誰が敵かわからない、複雑怪奇なドタバタ劇」(閣僚経験者)との声も広がる。

そもそも、自民党内最大のIR推進派は菅首相と二階俊博幹事長とみられており、IR汚職事件で逮捕・公判中の秋元司衆院議員(自民を離党)は二階派の一員だ。政界では「秋元氏は捜査の過程で『自民党の大物が何千万円ももらっている』などと供述した」(司法関係者)との噂も広がる。

小此木氏がIR横浜誘致反対で当選すれば、和歌山誘致に意欲を示す二階氏にとっては「ライバルが減る」ことにもなる。また、二階氏と気脈を通じる小池百合子東京都知事も、かねて五輪後の築地跡地へのIR誘致に関心を示しているとされる。「まさに魑魅魍魎が蠢く横浜市長選の舞台裏」(自民幹部)だ。

父親以来の夢を実現するチャンス

ただ、菅首相を支える河野、小泉、小此木3氏を比べると、河野、小泉両氏は「将来の総理・総裁候補」だが、小此木氏は「せいぜい党三役止まりの政治家」(自民長老)とみられている。

父親の彦三郎氏も横浜市長選への出馬を模索したことがあり、小此木氏周辺からは「中央政界での出世に見切りをつけ、父親以来の夢を実現するチャンスと判断した」との見方も出る。

たしかに、小此木氏が頼みとする菅首相はコロナ・五輪政局での苦境が続く。口さがない向きは「菅首相が五輪で失敗して退陣に追い込まれる前に、転身を図ろうというのが小此木氏の本音」と皮肉る。

市長選投開票日の8月22日は、同24日から始まるパラリンピックの直前だ。感染症専門家は「五輪開催に伴い、8月のお盆明けの東京の新規感染者数は2000人を超え、医療態勢も逼迫しかねない」と危機感を隠さない。
自民党内でも「感染爆発で東京に緊急事態宣言が発令されていれば、パラリンピックは中止せざるをえず、その時点で首相退陣論も噴き出す」(若手)との声も出始めている。

菅首相にとって「横浜市長選やIRなんてどうでもいい」のが実態かもしれない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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