小此木氏、「横浜市長選出馬」の複雑怪奇な舞台裏 横浜へのカジノ誘致反対で菅首相に反旗か

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小此木氏辞職を受けて、菅首相は直ちに後任の国家公安委員長に棚橋泰文・自民党行政改革推進本部長の起用を決めた。棚橋氏は同日の菅首相との会談後、「微力ではあるが、東京五輪を前に警備計画等、至急やっていかなきゃいけない。一寸の油断もできないので全力を尽くす」と決意表明した。

菅政権での閣僚辞任は、五輪担当相から東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長に転じた橋本聖子氏に次いで2人目。五輪開催直前に警備責任者である国家公安委員長が交代することについて、菅首相は「これまで関係機関が連携してしっかりと準備しているので、万全の態勢で乗り越えることができると判断した」と支障はないことを強調した。

菅首相と小此木氏は「家族同然の付き合い」

市長選出馬の小此木氏は衆院議員も辞職する必要があるが、「8月8日の告示までに辞める」と語った。

同氏は現在、自民党神奈川県連会長でもあり、神奈川3区の同党後継候補についても早急に決めたい意向だ。同県連内部では、参院神奈川選挙区選出の中西健治財務副大臣の鞍替え出馬が浮上している。衆院議員の任期は10月21日までで、それに合わせた衆院選実施で補欠選挙は衆院選に吸収される。

小此木氏は1993年初当選。現在当選8回のベテランで、2017年から国家公安委員長、国土強靱化担当相などを歴任した。菅首相と真理子夫人は、半世紀近く前には彦三郎氏の秘書と家事手伝いだったこともあり、小此木氏とは家族同然の付き合いを続けてきた。

小此木氏は無派閥だが、菅首相と同じ神奈川県選出の河野太郎規制改革・コロナワクチン担当相や小泉進次郎環境相とともに「神奈川三郎」と呼ばれる。小此木氏は2020年9月の自民党総裁選では菅陣営の選挙対策本部長を務め、「その論功行賞で入閣した」(自民幹部)とされる。

まさに菅首相の側近中の側近であり、小此木氏の市長選出馬は菅首相にとって「身内の反乱」ともなる。菅首相の意向を踏まえてIR誘致を進めてきた横浜の自民党市議団は、「小此木氏の出馬は裏切り行為」と不満と困惑を隠さない。このため、小此木氏は無所属で立候補し、自民、公明両党の支援を求める意向とされる。

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