ソファーで寝る女性から見えた認知症ケアの課題 2025年には高齢者の約5人に1人がなると推計
家族介護であれば、その負担はさらに増大する。
「家族は認知症になる前の親を知っていますから、どうしても比較をしてしまいます。私ももし自分の母親が認知症になったときには、また違う感情が生まれてくるかもしれません」
現代の医学では中核症状の進行を遅らせることはある程度可能だが、根治する手段は確立されていないという。一方で周辺症状は、症状に対応する投薬やケアを組み合わせることで緩和できるケースもあると阿久根さんは語る。
近年では、まだ生活に支障をきたしているかいないかの微妙な認知症の症状がみられる「軽度認知障害(MCI)」という状態に着目した治療も行われている。
「軽度認知障害の状態によっては、原因を取り除けばそれ以上進行せず、ある程度通常の生活ができていらっしゃる方もおられます。逆に発見が遅れれば遅れるほど、認知症になっていくリスクは高くなっていくと言われています」
認知症ケアの基本となる理念
では現在、認知症のある人に対しては、どのようなケアが行われているのだろうか。
厚生労働省が2005年度の介護保険法改正にあたって打ち出した「認知症ケアの基本的考え方」によれば、本人の「尊厳の保持」をベースに、以下の4項目が重要であるとされている。
本人の状態が認知症の症状であることを理解し、気持ちを受け止め寄り添う。
2.関係性の重視
長年過ごした家や家族など、本人を取り巻く環境を勝手に変えない。
3.継続性と専門性の重要性
認知症は進行性であるため、医療機関等の専門的サポートや適切なケアが重要。
4.権利擁護の必要性
法的な保護や支援、福祉サービスの利用援助を通して、判断能力が低下してしまった本人の権利を守ることが必要。
これに「身体のケア」も含まれるが、基本的な理解としては「本人の状態を受け止め、認め、その人らしさを最大限尊重する」ということになる。
具体的なケア内容は環境や状況によって少しずつ異なるものの、コミュニケーション・食事・入浴・排泄・運動といった日常的なケアはすべてこの考えをベースにしている。