「これらはいずれも診療所へのお願いベースであり、根本的な廃棄回避策にはなっていません。医療機関間の連携にしても、廃棄回避の取り組みにしても、ワクチンの個別接種が決まった時点で考えなければならない問題だった。結局、行き当たりばったりのワクチン政策、現場に丸投げということです」
ワクチン廃棄量を減らす「リザーブワン」とは?
そんななか、和田医師が期待するのが、練馬区が独自に考案したワクチン廃棄量を減らす取り組み「リザーブワン」だ。
通常、ファイザー社製のワクチンは1バイアルから6人分を確保するが、実は若干の接種液が残っている。この残留分をデッドスペースのない特殊なシリンジを使うと、2バイアルで1人分を新たに確保できる。つまり、2バイアルで13人分接種できる仕組みだ。
通常は2シリンジ分で12人の予約を入れるが、リザーブワン方式を用いると13人までの予約が可能になる。1人キャンセルが出ても、もともと12人分用であるため、破棄にはあたらないというわけだ。
「涙ぐましい取り組みともいえますが、体調不良などでの急なキャンセルに対応できるので、個別接種を実践する側としてはありがたいです」
練馬区では、従来の集団接種や個別接種に加え、新たに石神井スポーツセンターなどに区が主催する大規模接種会場を設置する予定だ。1日最大で1000人の接種が可能で、モデルナ社製のCOVID-19ワクチンモデルナ筋注を使用するとのこと。報道によると、個別接種と合わせて区民の65%が10月中旬までに接種を終えられる見通しだ。
「職域接種も始まりましたから、ますます個別接種を希望する人は減ってくるかもしれませんね。ただ、集団接種は持病のない比較的若い人に向いている接種法で、基礎疾患などがある方は、やはり健康状態をよく知るかかりつけの医師に接種してもらったほうがよいと思います」
集団接種や大規模接種の陰に隠れて、あまり見えていなかった個別接種の混乱。
練馬区には診療所が約300件あり、このうち160件を超える医療機関が個別接種を受け付けている。和田医師は「練馬区に限らず、どこの地域の診療所も抱えている問題はおそらく一緒ではないでしょうか。個別接種の重要性を鑑みて、“破棄はけしからん”といった状況は改善してほしい」と訴える。
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