ワクチン個別接種「キャンセル多発」診療所の難題 大規模や職域の陰に隠れて見えてない混乱の実態

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残っている課題は、予約がキャンセルになることで生じるワクチン破棄だ。コロナワクチンの場合、1バイアルで6人の接種分が確保できる。見方を変えると、もし6人集まらなければ、残りは破棄しなければならないということだ。

同院では現時点で、75歳以上の高齢者だけで7月16日まで予約が埋まっているが、これも確約ではない。実際、「ほかの診療所のほうが早かったから、そちらで打つ」「集団接種会場に変えた」などの理由で、バラバラとキャンセルが入ってきている。その数はすでに20~30件ほど。ワクチン接種のスケジュール表が歯抜け状態になりつつある状況に、「思っているよりもはるかにキャンセルが多い」と和田さんは驚く。

キャンセルを埋めるスタッフの対応は手作業

幸い、75歳以上の高齢者への接種券の配布に続き、65~74歳の高齢者への配布が始まった。新しい予約が入ってきているため予約は何とか埋まっているが、今後、キャンセルが増えれば、診療所のスタッフが予約希望者に連絡をし、接種を前倒しにできるか聞くという、穴埋め作業をしなければならない。もちろんこれらは手作業となる。

「体調不良などで当日キャンセルされるケースもあるでしょう。集団接種や大規模接種なら接種人数が多いので対応できても、接種人数が少ない個別接種ではどうしても廃棄分が増えてしまう。3人しか集まらなければ、半分は捨ててしまうことになるからです。そうならないよう努力しますし、今は廃棄することなく接種を終えていますが、正直、時間の問題だと思います」

近隣の医療機関と連携して、「お互い3人ずつなので、6人にしましょう」というわけにもいかないそうだ。理論上は可能だが、協力金が発生する事業だけに、普段まったく連絡を取っていない診療所と今から連携をとるのは難しい。

では事情をくんでワクチンを廃棄してもいいかというと、当然ながら練馬区からの通達では破棄しないことを前提にしている。実際、通達にはワクチンをムダにしない取り組みの具体策として、「接種の待機者(早急な接種を希望する者、翌日以降の予約者)に連絡し接種する」、「やむを得ずワクチンが余ってしまった場合、優先接種区分にかかわらず、付き添いで希望する方などに接種する」といった方法が紹介されている。

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