斜陽の「地方ラジオ」を買収したMBA学長の勝算 茨城発「日本の新しい地方創生モデル」を目指す
僕たちの戦略の大きな考え方は「原則1」で触れたように、「ラジオ」ではなく「音声・動画・テキストメディア」として生まれ変わることだが、ここでは特にコンテンツの側面において、どんな戦略を構築し、実行したかを紹介したい。
まず出発点になったのは「茨城放送の強みってなんだろう」という問いだ。自分の強みを知らずにビジネスで勝つことはできない。たとえばJ-WAVEなら、若者向けのおしゃれな感覚や国際色が強みだ。自分の強みを一言で言えることは、スポンサーに対してもリスナーに対しても武器になる。
ところが茨城放送の強みを誰も答えることができなかった。ラテンもジャズも演歌も詩吟も流す。「今日のタマネギ価格」といった農産物市況も流す。なかなか一言で言い表せない。
そこで発想の転換をすることにした。「弱みを強みに変える」ことは戦略を考えるうえで重要だ。「わかった。茨城放送の強みはダイバーシティだ」。これは苦し紛れでもなんでもない僕たちの強みだ。首都圏FMでアニソンと演歌を流すことは絶対にできないだろう。
強みがわかったら次にすることは、それを武器に攻勢をかけることだ。「バライエティー溢れる音楽」「ローカルメジャー」「ニッチトップ」「ニュース」「スポーツ」の5つのコンテンツにフォーカスして魅力あるコンテンツを増やしていった。
目玉の帯番組として「ダイバーシティニュース」を立ち上げたのをはじめ、「今夜はラッキーナイト」「週刊ニュースポ」「JK HipHop」「プロレス聴こうぜ」「ロボッツロッカールーム」などの番組だ。僕がパーソナリティーを務める「リーダーの挑戦」やグロービス提供の「みんなの相談室」も始まった。
こうして、LuckyFMがモノカルチャーを推し進めるメディアではなく、多様性を標榜するメディアであることを全面的に打ち出していったのだ。
ラジオ局を買収したからラジオ事業をやるという考えでは未来はない。インターネットやスマホ・アプリの時代には、それに適応した姿に自らを変化させる必要がある。動画配信に力を入れるためにスタジオを作り、音声はラジオやradikoで流し、動画はYouTubeで配信しアーカイブに収め、テキストをSNSやオウンドメディアで流すスタイルを確立した。
また「ダイバーシティニュース」の収録は東京麹町にあるグロービスのスタジオで行うことにした。茨城放送の動画コンテンツを東京で作るということも以前なら考えられなかったことかもしれないが、これも時代の流れに合わせた、柔軟な発想によるものだ。
茨城に新しいメディアを立ち上げ地元を活性化させることは、一朝一夕にできることではない。瞬間的な勢いだけではいずれ立ちゆかなくなるだろう。僕たち自身、目先のプロジェクトを進めながら、日々貪欲に学び、成長し続けていく必要がある。
そこで会社のトップにグロービスのエグゼクティブ・プログラムを受講してもらい、社員にもグロービス水戸校でクリティカルシンキングなどの研修を受けてもらうことにした。
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