斜陽の「地方ラジオ」を買収したMBA学長の勝算 茨城発「日本の新しい地方創生モデル」を目指す

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こうした活動の結果が具体的な数字として現れるのは、もう少し先のことになるだろう。だがすでに、いくつか手応えを感じ始めている。たとえば、住友不動産、丸井、セブン‐イレブン、DMM、マネーフォワード、レバレジーズといったナショナルクライアントの獲得という形で。

「ダイバーシティ戦略」をはじめとする僕たちの戦略に賛同し、番組に魅力を感じてくれたことがこうしたスポンサーを獲得できた理由の1つだが、なんと言っても大きかったのは電波の改善だ。総務省の免許をもらい、7月1日以降、筑波山系に設立した新しいアンテナから100Wの電波を発信している。

またradikoのエリアも茨城県から関東全域の一都六県に拡大した。これによりLuckyFMの番組は、これまで難聴地域だった県南だけでなく、首都圏のリスナーにも届くようになったのだ。聴取可能者数は700万人から4000万人超に増えた。茨城の魅力を他地域に発信する力を、ついに手に入れたのだ。

また、社員にも変化が見られはじめた。これまでは自主制作の番組が少なく、他局や制作会社から買ってきた番組や通販番組がほとんどだった。でも今は「ダイバーシティ」の旗の下、多彩なコンテンツをどんどん自主制作する路線に舵を切っている。19年ぶりに報道番組が復活し、23年ぶりに深夜番組も復活した。それに伴って忙しくなったことは事実だが、自分たちで番組を作ることの喜びを噛みしめている彼らの表情が、以前に比べて明るくなったと感じているのは僕だけではないはずだ。

リスナーに目を移すと、夜の自主制作番組の多くはradikoの聴取者数や占拠率が以前に比べて倍になり、#(ハッシュタグ)をつけた番組名は連日のようにツイッター茨城トレンドのトップになっている。ここまで、出だしは順調と言っていいだろう。

将来の夢

いま、地方のメディアはどこも苦境に立たされている。でも、「僕たちは、決して衰退産業なんかじゃない」と言いたい。

当面の目標は水戸と茨城を元気にすることだが、LuckyFMの取り組みがうまくいけば「地方発のメディアカンパニーの魁」になれると信じている。そして、このモデルを他の地方メディアのお手本としてもらうことで、日本全国の地方を元気にすることも夢ではないと考えている。

そのためにも、まずは茨城でのプロジェクトを絶対に成功させるつもりだ。

遠くない将来、皆さんの前で記者会見を開き、その報告ができることを楽しみにしている。そして、その時の僕の肩書きは「LuckyFM」のオーナーであり「LuckyTV」のオーナーでもあるかもしれない。

そう、僕はまだ、茨城にテレビ局を作ることも諦めていないのだ。  

堀 義人 グロービス経営大学院学長

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ほり よしと / Yoshito Hori

グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー。京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、世界の成長企業(GCC)の共同議長、アメリカハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)、アメリカウィルソンセンターのグローバルアドバイザリーカウンシル等を歴任。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設し、現在一般社団法人G1の代表理事を務め、日本のビジョンである「100の行動」を執筆する。2011年3月大震災後には復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、現在一般財団法人KIBOWの代表理事を務め、KIBOW社会投資ファンドを組成し運営している。2016年に水戸ど真ん中再生プロジェクトを始動。2016年4月からは茨城ロボッツの取締役兼オーナーとなる。他には、公益財団法人日本棋院理事、いばらき大使、水戸大使等歴任。5男の父親で、水泳のジャパン・マスターズに毎年出場している。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『新装版 人生の座標軸 「起業家」の成功方程式』(東洋経済新報社)、『日本を動かす 100の行動』(共著、PHP研究所)等がある。

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