作業員が震え上がる「アマゾン」恐怖の労務管理 強力な監視に加えて、手違いによる解雇も続発
2019年のある日、たまたまトラブルが重なるまで、ダヤナ・サントスは作業効率でトップクラスの成績を誇っていた。この日、サントスは通勤に使っているバスが遅延したことから、担当の持ち場が変わり、新しいワークステーションを見つけるために倉庫内を探し回る羽目になった。サントスに驚愕のしらせが届いたのは、その午後だ。作業の手を休めている時間「タイムオフ・タスク(TOT)」が目立つので解雇する、というしらせだった。
生産性が低かったり、TOTが一定の数値に達したりして解雇される作業員は実際にはごくわずかだが、従業員はそうした事実を知らない。JFK8の内部ガイドラインにはこう記されている。従業員の生産性を追跡する目的は「全員の違反を記録することではなく、TOTによる監査が行われていると作業員に知らしめることにある」──。
このシステムはもともと従業員の作業効率を下げる問題を洗い出す目的で作られたものだ。しかし今では、従業員に巨大な影を落とし、不安だらけのネガティブな職場環境を生み出すようになったと危惧する声が一部の幹部からあがるようになっている。こうした幹部には、アマゾンの倉庫で労務管理の原型をつくった人々も含まれる。
サントスとTOTについてニューヨーク・タイムズが問い合わせを行った後、アマゾンは生産性の低い日が1日あっただけで従業員が解雇されることのないように方針を変更したと発表した。サントスと同様の理由で解雇された従業員は、サントスも含め再雇用の対象となる。同社は、方針の見直しは何カ月も前から検討していた、としている。
高い黒人作業員の解雇率
アマゾンという巨大ネット通販企業は、大部分が有色人種の労働によって成り立っている。2019年の内部資料によると、JFK8従業員の6割以上は黒人かラティーノ(中南米系)だ。
そして倉庫で働く黒人作業員は、同内部資料によると、低生産性や素行不良、常習的欠勤といった理由で、白人作業員に比べ5割近くも多く解雇されている(アマゾンは、それがどのような内部資料なのか具体的な情報が示されなければデータを確認することはできない、とコメントした)。
アマゾンの大ファンとして2015年にJFK8で働き始めた黒人作業員デリック・パーマーは、何度も成績優秀者に選ばれている。