作業員が震え上がる「アマゾン」恐怖の労務管理 強力な監視に加えて、手違いによる解雇も続発

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シアトルにある本社では、経営陣の一部が離職率に懸念を募らせている。このままいけば、働き手が足りなくなるおそれがあるというわけだ。最近まで人事部門で倉庫作業員の実態把握チームを率いていたポール・ストループは、従業員が短期間で入れ替わっていくことについて社内で「長期的な考えが聞かれなかった」ことに失望している。気候変動が深刻化しているにもかかわらず、化石燃料を使い続けるようなものだ、とストループは言った。

「自分で自分の首を絞めていると知りながら、それでも会社は化石燃料(のように人材)を消費し続けている」

理由もなく解雇されていく従業員

2.システムのバグで理由もなく解雇される従業員

バグだらけのシステムのせいで、福利厚生を失ったり、誤って解雇されたりするケースもあった。

アマゾンで労務管理システムの開発・運営に関わったことのある現職および元従業員25人以上は取材に対し、同システムの不備はいら立ちとパニックの原因になっていたと嘆いた。パンデミックが始まってからの数カ月で状況はさらに悪化したという。問題に対処しようと柔軟性を高めたシステムは依然バグだらけ。休暇を申請した従業員が無断欠勤で処罰され、職場放棄という理由で解雇されていった。

「アマゾンに残って働きたい」。JFK8の従業員だったダン・カヴァグナロは最後に送信したメールでこうした一文を目立たせ、雇用継続を願い出た。が、返答はなく、結局、手違いで解雇された。

コスタリカのバックオフィスで労務管理業務に携わっていたダンジェロ・パディリャは、理由もなく従業員が解雇されるケースをたくさん見てきたと話した。

「そういった状況は毎日目にした」とパディリャ。

前出の広報担当ナンテルは、アマゾンはパンデミックの間、休暇申請の承認を迅速化し、申請の増加に対応するために500人を雇い入れたと述べた。さらに従業員を解雇する前には、働き続ける意思があるのかどうかを確認するため本人に連絡する努力を怠らなかったとコメントした。

3.ガチガチの監視体制で広がる恐怖の職場文化

アマゾンは物流拠点内で従業員の動きを細かく追跡している。作業に時間がかかりすぎたり、待機状態が長くなりすぎたりすると、解雇の危険にさらされる。

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