作業員が震え上がる「アマゾン」恐怖の労務管理 強力な監視に加えて、手違いによる解雇も続発
しかし、絶え間ない監視に加え、大半の作業員は怠けているという前提でつくられた職場の仕組み、昇進の機会がないことなどから、「マイノリティーの従業員の多くは、自分たちは単に使われているだけだと感じていた」とパーマーは話した。アラバマ州のアマゾン倉庫で労働組合を結成しようとする動きは先日失敗に終わったが、労組結成を支持していた黒人従業員の間でも、パーマーが語ったのと似たような感覚が広がっていた。
創業者ベゾスが株主に宛てた驚愕の手紙
近視眼的な雇用モデル、昇進機会の欠如、テクノロジーによって推し進められる採用・監視・管理……。従業員を苦しめている労務管理手法の大本をたどると、その一部は創業者ジェフ・ベゾスの考え方に行き着く。
従業員の固定は「凡庸への道」──。アマゾンで幹部を長年務め、同社倉庫における労務管理の原型を作り上げたデビッド・ニーカークによれば、これがベゾスの信念だった。
社内では、たいていの従業員は勤続期間が長くなるにつれ残業を嫌がるようになるというデータが示された。ベゾスは「人間は本質的に怠惰だ」と確信していた、とニーカークは証言する。「欲しいもの、必要なものを手に入れるのに最小限のエネルギーで済ませようとするのが人間。これがベゾスの考え方だった」(ニーカーク)。
簡単かつ瞬時に注文できる仕組みからデータの幅広い活用に至るまで、こうしたベゾスの信念がアマゾンのビジネスの隅々にまで埋め込まれている。
ベゾスは自らが生み出したシステムについて最近、驚くような譲歩を口にした。株主に宛てた文書で、アラバマ州の倉庫で労組結成の動きがあったことは「従業員の成功のために、より優れたビジョンが求められている」ことを示していると述べ、こう約束したのだ。アマゾンは「地球上で最高の雇用主になる」──。
だが、市場でアマゾンが支配的な地位を築くことを可能にしたシステムをどう見直すつもりなのかは、はっきりしない。
アマゾンから手違いで解雇されたカヴァグナロが問いかける。「従業員の使い捨て問題に、彼らは本当に対処するつもりなのだろうか。何かが変わるなんてこと、あるのだろうか」 =敬称略=
(執筆:Jodi Kantor記者、Karen Weise記者、Grace Ashford記者)
(C)2021 The New York Times News Services
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