東京東部「荒川大氾濫」への備えはできているのか 最悪シナリオへの広域避難にはいまだメドつかず

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一方で、同じ年の2018年6月には、内閣府と東京都が「首都圏における大規模水害広域避難検討会」を設けた。検討の途中で、2019年の台風19号で広域避難検討への新たな課題が浮上した。広範囲、同時多発的な水害が発生し、広域避難先も深刻な事態に見舞われる可能性があること、鉄道会社が計画運休に入り、避難の移動手段がなくなることなどだ。

最悪の事態で「ほとんどが水没」と危機感を募らせる江東5区(写真:ハザードマップのパンフレットから)

内閣府と東京都の検討会は今年2月、広域避難の新たな方向性を示した。親戚や知人を頼って広域避難できる人たちが約154万人、浸水区域にある地元の公共施設の高層階に避難できる人たちは約23万人などと整理し直し、公的に確保された避難先が必要な人数は約74万人と絞り込んだ。6月17日に開かれた検討会で、改めてこの方向性が議論された。

避難所運営のあり方を変えなければ

しかし、公的な避難先の確保や、そこへの移動手段をどうするかについては、検討が続いている。今年の出水期中に公表できるかは難しいという。

内閣府と東京都による検討結果を待つ間、江戸川区は、東京都の防災アプリを使って区民各自がリスクを避ける行動をとれるよう普及啓発に乗り出す。また、広域避難の選択肢として、地盤が高い場所のホテルを利用すれば宿泊補助が出る仕組みを用意した。

コロナ禍により、自治体はこれまでの避難所運営のあり方を変えなければならない。風水害であれ、地震であれ、来ないに越したことはない。しかし、気候変動の影響により風水害が大型化し、地震や火山活動の活発な時期に入っていることは指摘されている通り。ありえない事態が起こると考え、自治体も個々人も備えるしかない。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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