東京東部「荒川大氾濫」への備えはできているのか 最悪シナリオへの広域避難にはいまだメドつかず

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「ところが、12日午前7時15分、気象庁から『荒川流域の3日間総雨量が500ミリを超える可能性がある』と連絡が入りました。8時に災害対策本部を設置し、9時半には新中川以西の地域に避難勧告を出すことを決定。避難所開設準備に入り、9時45分から防災行政無線で呼びかけました。夕方にかけ雨風が強まるという予測だったので、早いうちが勝負と判断したのです」

荒川流域の3日間総雨量が「400ミリ超え」と「500ミリ超え」では、そんなに違うのだろうか。

「全然違うんです。荒川の場合、200年に一度に匹敵する国の想定雨量は516ミリ。1000年に一度は632ミリですから。100ミリ違ったら大変なことです。もう、マックスですよね。500ミリを超えるというのは、ちょっともう、本当にその時なのかな、とそういう風に受け取りました、私は」

2019年10月12日には、105の避難所が開設され、約3万5000人が避難した(提供:江戸川区)

引き潮で増水した川の水がみるみる間に海へ

江戸川区は、2019年10月13日の午前8時に避難勧告解除を発表し、午前9時半には、全避難所の閉鎖を完了した。

10月13日の午前8時というと、岩淵水門付近ではまだ水位が上がり続けていた。ここで最も高い水位に達したのは午前9時50分だった。

江戸川区が注目したのは、岩淵水門から20km下流にある荒川の南砂町観測所の水位。13日午前4時20分にA.P.2.76mだったが、午前7時には2mを切り、午前8時にはA.P.1.66mと下がり続けた。荒川下流河川事務所とやりとりするなかで、岩淵水門付近で水位が上昇しているものの、さらに上流では新たな増水が止まっていることがわかった。気象庁の情報、そして国土交通省作成の雨量と水位の相関関係を示すグラフをにらみつつ、解除を決めた。

河口近くで水位が急速に下がった原因は、引き潮。この日の東京湾は午前4時29分に満潮、午前10時47分に干潮のピークを迎えている。「潮がどんどん引きに入っている状態。岩淵のほうは水位が上がっていますよということでしたけど、水は下流に向けてひっぱられている状態。上流からの水より、潮が引くほうが強く、増水した水はどんどん海に流れ出てくれました」(山口正幸・江戸川区危機管理部長)

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