ワークマン、成長に欠かせない「新業態」の使命 「プラス」出店からわずか2年で女子業態を開始

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目的買いが中心のプロ客に比べ、一般客は商品を手に取ったうえで購入を決めることが多く、店での滞在時間が長い。そのため、一般客が増えた既存店では駐車場不足の問題などが起きていた。ワークマンによると、一般客はプロ客よりも駐車時間が3倍ほど長いという。その中で、仕事で急に作業服や作業用品が必要となったプロ客が、駐車場不足で来店できないという事態も起きていた。

好調な店の周辺に新業態を置き、一般客を誘導していけば、そうした混雑を少しでも解消できる。つまり新業態は、客層を広げながらプロ客の満足度をも高める「二兎を追う」戦略なのだ。

同社は、今年12月にはプロ客に特化した新業態「Workman Pro」の出店も計画している。現状ではこの新業態で多店舗化の計画はないが、より直接的にプロ客の満足度を高める戦略だ。出店に合わせて、プロ向けの商品も再強化。デニム生地などを使ったスタイリッシュ作業服は、「昨年は15万着程度だったが、今年は100万~120万着売っていく」(土屋専務)。

多店舗化に向け、店舗運営をマニュアル化

ワークマンでは今後女子業態を10年で400店、20年で900店を全国展開する計画だ。ただ、そのハードルは決して低くない。一般客を狙うワークマン女子は、通常のワークマンの店舗より客層が幅広く、標準化に難しい側面があるからだ。

多店舗展開を本格化させる(記者撮影)

南柏店では路面店における運営ノウハウを蓄積し、マニュアルの整備に着手する。SCで展開するワークマン女子では、商品の説明を求められることが多いといい、「接客の質と売り場の見せ方が課題になる」(担当者)。マネキンの置き方など、ディスプレイについてもパターン化する。そのうえで、9月盛岡に出店するワークマン女子の路面2号店から、フランチャイズでの展開を始める計画だ。

ワークマンは今後も「二兎を追う」戦略で成長することができるか。それは新業態の成否にかかっている。

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ワークマンとカインズは“きょうだい”
知られざる「1兆円小売り集団」の全貌

データ編/「3つの指標」でわかるベイシアグループ

インタビュー①/ワークマン土屋哲雄専務
「ワークマンにプロ経営者はいらない」

インタビュー②/カインズ土屋裕雅会長
「孤高の“ハリネズミ経営”を目指す」

インタビュー③/ベイシア創業者
「膨張ではなく成長を追求してきた」

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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