「新幹線オフィス」誕生、仕事場としての実力診断 座席で電話OK、「スマートグラス」貸し出しも

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メガネのようにかけるだけでパソコンのサブモニターとして利用できる「スマートグラス」も今回初めての試みで、一部の列車で貸し出される。

パソコンのサブモニターとして使えるメガネ型の「スマートグラス」も一部列車で貸し出す(撮影:尾形文繁)
座席の肘掛けに取り付ける折りたたみ式パーティションを広げたところ。今回の実証実験では一般客には貸し出さない(撮影:尾形文繁)

テーブルが小さいという意見を反映して、A3サイズの紙を横向きに置けるタブレットテーブルも搭載された。また、座席の肘掛けに取り付ける折りたたみ式のパーティションも導入。もっとも、この2つは「仕様を検討中」(JR東日本)とのことで、一般客には貸し出されず、同社社員が使い心地の検証をするためにのみ使われる。もしゴーサインが出て、実際に大きなテーブルが使えるようになったら、かなり便利になりそうだ。

今回の実証実験の利用者に対してもアンケート調査が行われる。その内容は「新幹線オフィスでの困りごとは何か」という、利便性改善に向けた質問のほかに、「もし新幹線オフィスを利用できるなら、いくらくらいの追加料金が妥当か」といった質問もある。

選択肢は自己負担、会社負担それぞれのケースについて、0円、1000円未満、1000〜3000円未満、3000〜5000円未満、5000円以上といった項目から選ぶ。かなり具体性に富んだ質問であり、新幹線オフィスの実施に際して追加料金の有無についても検討していることがわかる。

1号車は普通車指定席である。東京―仙台間の実質的なグリーン料金は3360円なので追加料金がグリーン料金を上回ることはないと思われるが、自席で電話ができるという付加価値がはたしてどこまで評価されるか。今回貸し出されるツールが本番でも貸し出されるかという点もポイントになりそうだ。

今後は専用車両も視野に

現在はE5系の既存車両を使って実証実験を行っており、座席などの設備は従来のままだが、「次のステップとしては専用車両を視野に入れて考えていく」と、深澤社長は昨年12月に話している。

2030年度末の北海道新幹線札幌延伸を見据えた高速運転試験車両「ALFA-X(アルファエックス)」は、東京―札幌間を長時間乗車する利用者にいかに有意義に移動時間を過ごしてもらうかということを念頭に試験が行われている。今回の実証実験で得られた知見がアルファエックスでの試験に活用され、それが将来の営業車両の開発に生かされるという流れになりそう。今回の実証実験に先立つ試運転にはJR北海道の担当者の姿もあった。札幌延伸時には北海道独自の取り組みがあるかもしれない。

ほかのJRも新幹線オフィスの取り組みに動き出した。JR九州は6月14日から30日までの17日間にわたって、6号車の一区画をリモートワーク推奨車両とした「シェアオフィス新幹線」を運行している。対象列車は上り、下り1各1本ずつと数が少なく、小さな出足となったが、「まず実証実験からスタートして、お客様のご意見を踏まえて商品化につなげたい」と、JR九州の福永嘉之鉄道事業本部長は話す。

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