「新幹線オフィス」誕生、仕事場としての実力診断 座席で電話OK、「スマートグラス」貸し出しも

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JR東海も東海道新幹線で「ビジネス向け車両」を検討中。スタート時期は未定だが、東京―名古屋―大阪という経済大動脈をつなぐだけに新幹線オフィスのニーズは大きい。専用車両を設けるほか、出発前は駅待合室を改良したビジネスコーナーで、到着後は周辺ビル等に設置したオフィススペースでも仕事できることを打ち出している。

JR東海の金子慎社長は5月14日に行われた決算説明会の席上で、「移動行程にわたってシームレスで仕事をできるような環境を整えたい」と意気込みを示した。

同社の巣山芳樹副社長は次のように説明した。

「東海道新幹線ではほかのお客様のご迷惑にならない限りは、携帯電話の会話はデッキに行かなくても自席で静かに話してもらえれば構わないが、昨今の状況では自席での電話は前後の席から苦情が来るかもしれないので使いにくい面はある。ビジネス向け車両では自席で携帯電話を使ってもよいということをPRしたい。パソコンについてもプレゼン資料を作成するためのキーボードの音がうるさいという人もいるかもしれないが、乗客がみな仕事をしているような専用列車があれば気兼ねがない。たとえば、“○号車はビジネス専用の車両です“といった具合に最初の段階からビジネス向け車両として席を売っていきたい」

喫煙スペースをビジネスブースに改造するにすることもありうるが、車両の設計変更が必要となるため、実現までに時間もコストもかかる。そのため、当面はWi−Fiの増強などの対応にとどめる。グリーン車と普通車のどちらにビジネス車両を設けるかといった点については、「迷っている。考えているだけでは結論が出ないので、まずやってみて、お客様の意見を聞きながら決めていきたい」と、金子社長は話す。

追加料金についても未定だ。ビジネス向け車両と普通の車両の違いが仕事をできるかどうかにすぎないなら、追加料金を取るまでに至らないが、Wi-Fiが増強され、さらに前後の駅などでシームレスに仕事ができるといった付加価値があれば、追加料金を設定する余地がでてくる。

「ビジネス席」登場なるか

JR西日本も「新幹線車内のビジネス環境の強化について検討している」という。ただ、JR西日本の単独展開ではなく、東海道新幹線と山陽新幹線の連携という形だ。新大阪、広島など、JR西日本の駅におけるビジネススペースの提供などで、独自の付加価値を付けたいところだ。

テレワークの進展による出張需要の激減で、鉄道の旅客収入は大きく落ち込んでしまった。JR東海の金子社長は「経営環境の変化に対応した収益の拡大に取り組んでいく」としており、収益面からも新幹線オフィスに対する期待は大きい。各社の新幹線に、指定席とグリーン席に加えて、「ビジネス席」という新たなグレードが登場する日は遠くなさそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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