「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技

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顧客に対して個人情報保護を明確にしたうえで、新車を売り切り型にしないほうが、市場に出回るクルマの情報を自社でコントロールしやすいからだ。

さらに、この記者発表の中で、新車または中古車として市場に出回ったクルマの内外装のカスタマイズについても、KINTOとしてさらなる検討を行う旨の発言があった。これは、2020年1月から実験的に始めた、中古車版「KINTO ONE」の応用との印象を持った。

中古車を新車製造ラインに流す、重大な意味

前述の会見の4日後、トヨタの製造部門の統括者による“未来を拓く大切なものづくり”というオンライン会見があった。

この中で、「KINTOで取り扱う中古車をリノベーションし、ワクワクするような車に仕立て直して提供することにトライする」、また「中古とは思えない質感、あるいは他にはない外観や内装の提供など、お客様にとって自分だけの1台をお届けすると同時に、循環型社会にも貢献していきたい」という、自動車メーカーとしてこれまで経験のない領域へ本気で踏み込む姿勢を明らかにした。

記者との質疑応答では、トヨタ側は中古車リノベーションをする場所について販売店、または新車の「最終組立工場内にサブラインを設置する可能性がある」と説明した。

トヨタの新車製造ライン(写真:トヨタ自動車)

新車の製造ラインに“中古車が出戻ってくる”ことは、メルセデス・ベンツやマツダなどが“旧車レストア“として新車とは別工場で対応する事例はあるが、新車製造ラインとして見ればこれまでの自動車産業界の商流では“ありえない話”であり、販売店にとしては“極めて重大な事案”として捉えている。

なぜならば、自動車商流の根源である“製販分離の終焉”につながりかねないからだ。

改めて商流として自動車産業を見てみると、自動車メーカーは自動車部品メーカーに対して部品の開発や生産を依頼し、またボディの原料である鋼板などを仕入れ、最終組立工場でボディ(板金)、溶接、塗装、組み立て、検査という製造ラインを通じて新車を製造。新車は最終組立工場から出荷され、国内や海外の新車正規販売店で卸売り販売される。

最終組立工場から出荷される新車(写真:トヨタ自動車)

新車正規販売店は、日本の場合、マツダやスバルなどメーカーが直接資本を投じる形式が多いメーカーもあるが、近年は地場企業が主体の傾向が強まっている。トヨタの場合、東京中心部を管轄する「トヨタモビリティ東京」がトヨタの直接資本である。そのほか、海外では各メーカーとも、地場企業による販売店経営が主流だ。

さて、日本のトヨタ大手ディーラー経営者が「トヨタの顧客は我々販売店だ」と言い切るように、メーカーは文字通り製造専業社であり、その販売部門は正規販売店向けの卸売り事業にとどまる。

次ページ“製販分離の終焉”で販売店の役割はどうなる?
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